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遠い日の約束。
第5章 忘れていた過去
そしてお義兄さんと出会い結婚して子供を産んだ。
ギリギリまで私には教えてくれなかった。
きっと言いづらかったんだと思う。
生まれる2か月ぐらい前に電話があって子供が生まれると言われ、私はうれしかった。
あの時はまだ子供で自分に起こった悲劇にばかり目がいって、人の心まで考える余裕がなかった。
だけどその時は違った。
私も大人になり、彩ちゃんの妊娠を喜んだ。
私が産めない子供を彩ちゃんが産んでくれる。
私に赤ちゃんと言う小さな命の奇跡を感じさせてくれるんだって。
でもそれは口には出してなくて「おめでとう、早く抱っこしたいな」ぐらいしか言っていない。
私の思いを彩ちゃんには告げていなかった。
だから、私の一言で彩ちゃんは傷ついた。
私に子供ができたらなんてあり得ないことだから。
だけど私の心は最近変わった。
俊樹さんの一言で、自分でも気づかなかった闇が消えた。
「100%じゃなければ避妊はすべき。0じゃない限り諦めるべきではない」と俊樹さんは言ってくれた。
その言葉に救われ子供がいる未来を想像できるようになっていた。

「お母さん…」

「何?」

鍋を掻き混ぜながら、洗い物をしているお母さんに声をかける。

「もう…大丈夫だから…。」

お母さんの手が止まり私を見る。

「子供の事…私諦めてないから…10%の可能性は残ってるから…」

お母さんの目尻が下がり目元でキラリと光るものを見た。
それを気がつかれないように洗い物を始めた。
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