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第5章 忘れていた過去

ベッドの上に寝転び瞳を閉じる。
その中に浮かび上がるのは俊樹さんの顔。
屈託なく笑う笑顔。
そして差し出される手。
その手を取って、俊樹さんの胸に飛び込む私。
早く抱きしめられたい。
早くあの温もりを感じたい。

「華ちゃん…いい？」

ドアがノックされ彩ちゃんの声がしてベッドから起き上がりドアを開けた。
彩ちゃんの表情は曇っていた。

「どうしたの？」

「うん…」

何かを言いたいのに言えないのか口ごもる。
私は彩ちゃんの手を引いてベッドに座った。
少し時間が立てば、彩ちゃんが口を開く。

「ごめんね…」

ぽつりと言葉がひとりでに舞う。

「こだわってるの…私だけかな…」

今にも泣き出しそうな表情だった。
彩ちゃんが何を言いたいのか私には分かった。
彩ちゃんもずっと何年もわだかまりがあったのだと初めて知った。

「ここ最近なの…それまでは…」

言葉が続かない。
どう言えば思いが伝わるのか分からなかった。
もう私は大丈夫なのだと伝えたい。