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遠い日の約束。
第5章 忘れていた過去
「車にロープと浮輪を乗せてたからそれを持ってお父さんたちはゆっくりと中央に向かって歩き出した。いつ自分が落ちるか分からないのに貴方たちを助けるために躊躇しなかった。
しゅう君はね。華を抱きしめて何度も氷の上に登ろうとしてた。だけど、登ろうと力を入れた瞬間にその氷は割れて何度も湖に沈んでは這いあがってた…遠くから見ながら何もできない自分を悔やんだ…そしてふたりが落ちて30分後ぐらいにやっと引き上げられてふたりをこの腕で抱いた…洋服を着替えさせて火で温めて…それでも体温は上がらなくて急いで病院に行ったの。病院に連れていくのがあと少しでも遅かったら華の命はなかったと先生に言われて…それから一か月近く入院したの。高熱を繰り返しながら。しゅう君は男の子で華より大きかったから酷くはならなかったけど2週間近く入院してたわね。その間にしゅう君のお父さんは先に海外に行ってしまって、しゅう君が退院したらすぐに行ってしまった…最後に華に会いに来てくれた時も華は高熱で会えなかったのよ…だから、さよならはしてないの」

初めて知る自分の過去。
お母さんの話を聞いて、薄っすらと思い出す幼い頃の思い出…
私は、命を救ってくれたしゅう君をどうちちして忘れていたんだろう。

「もしかして…私の水嫌いはそこから?」

「その前から好きではなかったけど、それからかしらね。見るのも触るのも怖いって言いだしたのは」

やっと分かった水嫌いの理由。
溺れて死にかけたとなれば怖くなるのは当たりで納得した。
そしてその恐怖から記憶を消した。
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