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遠い日の約束。
第5章 忘れていた過去
「俺ね…彩と出会うまで女の人を好きになったことないんだ。」

その一言に一瞬たじろぐ
だって、女の人をってことは男???
そんな私の心を見透かしたかのように笑った。

「普通、そっちを思い浮かべるよね。けど男も好きになったことないよ…というか人自体を好きになれなかった…」

「人?」

「そう…人と関わるの嫌いで、人に干渉するのも干渉されるのも嫌いでね。学生の頃なんてほとんど一人だったよ。両親を早くに亡くして、祖母の家で育ったんだけどね。唯一祖母だけだったかな?会話らしい会話してたの」

お義兄さんの話を聞いて驚く。
今のお義兄さんからは想像もつかなかった。

「社会人になったらそうもいかなくなって…それなりに処世術を身に着けてソツなくはこなしてた。そんな時、仕事で彩がいる会社に行って挨拶しても別に何とも思わなかった。2時間ぐらし仕事の話をして最後に握手をしようとしたときに静電気が起こってね。それも火花まで出るし、驚いて…そしてふたりして笑った。その時の彩の笑顔を見た瞬間に俺…彩に恋をした…あっ…俺…こいつと結婚する!って頭の中で幸せに暮らす未来が想像できたんだ。その日はそのまま帰って、会社のメールから彩にメールしたんだよね。「ごは食べに行きませんか」って。すぐにOKのメールが来て…その食事の時にプロポーズした…彩も迷わずOKしてくれて…。彩も俺と同じであの時に結婚するって決めてたって…これが運命なんだなぁって思ったよ。俺は彩と出会うために生まれてきたんだって。彩と出会わなければ、死ぬまで独りだったと思う…」
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