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遠い日の約束。
第9章 幸せな日々の中で
春馬が戻ってからは仕事が忙しくなり、今まで話を聞けずにいた。

「感想ねぇ…一度帰っただけだからなんとも…」

春馬は言葉を濁しながら余り語りたがらない。
普通だったらもっと喜びそうなのにと不思議に思ったけど、一度しか会ってないとなれば実感がわかないのかもしれないとその時はそう思っていた。

「実感わかなくて…本当に俺の子かって…俺以外…ありえないんだけどな……」

少し、表情が曇り力なく笑った。

「転勤願い出してるんでしょ?」

「良く知ってるな…部長か?」

「うん…うちのエースがいなくなってどうするんだって嘆いてたよ」

その言葉に苦笑する。
だけど部長の気持ちもよくわかる。
この支店で一番の営業マンで、彼がいなくなると打撃を受けるのは目に見えている。
もちろん俊樹も日本に慣れて成績も上がってきたとはいえ、ずっと日本で営業一本でやってきた春馬に追いつくにはまだ時間が足りなかった。

「子供の為には一緒に住むのが一番だと思って転勤願い出したのはいいけど…あの家からじゃ遠すぎて…引っ越そうにも嫁は嫌がるし…どうしていいもんかなぁ…」

相変わらず奥さまは田舎から出るのが嫌らしく、ふたりの関係が上手くいっているのかと心配になる。
だけど、ここで私が口出するわけにはいかない。

「そっかぁ…難しいね。」

「まぁな…それより出産祝い。向こうに送っといたから。喜んでたみたいだったよ。ありがとな」

最後のひとくちを口の中に頬り込み、「じゃあな」と言って自分の席に戻って行った。。
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