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遠い日の約束。
第13章 混在する記憶
「良いこと教えてあげようか。立花さん、今、誰と飲んでると思う?」

高宮くんの言葉は意味がわからなかった。
俊樹が今、誰といるかなんて聞く意味がわからなかった。
だって、俊樹はクライアントと飲んでる。
それ以外、誰と飲むというのだろうか…
そんな私の心を読み取ってか、馬鹿にしたように笑う。

「男は平気で嘘つくって教えてあげたのに。華の愛しい俊樹はね。総務課の篠原さんと一緒だよ。華のことなんて忘れて今頃ホテルなんじゃないかな?」

「えっ…」

予想外の名前に高宮くんを見上げた。

「やっぱり知らないんだ。出張といいながらの逢引だよ」

「…うそっ…」

うそだと思いながら高宮くんの言葉を信じてしまいそうになる。
だけど、俊樹が私を裏切るはずなんてない。
ここ最近はぎくしゃくしてたけど、俊樹が私を裏切るような、そんな人じゃないことぐらい私は知ってる。
私は俊樹を信じる。
こんな人の言葉を私は信じない。

「俊樹は私を裏切らない。」

「自分は裏切っといて、立花さんは裏切らないって?虫の良い話だね。」

クスクスと笑う声が癇に障る。
だけど…彼が言うことも間違いじゃない。
私は、俊樹を裏切って春馬と寝ようとした。
もし、あの時、春馬が止めなかったら私は…春馬と寝た…
やっと整理がついた心がぐらつきはじめた。
それが彼の狙いだとは知らずに、彼の思惑にはまっていく。
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