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honey chocolate
第3章 焦燥の緋色

休みの日。


森山との待ち合わせ。


約束の時間、五分前。知咲は例のカフェの前にいた。


「待った?」


「ううん」


はぁ、と息を少し吐く森山。


「じゃ、行こうか」


普段はスーツと制服姿で装備しているから、洋服姿で会うと少しだけ構えが緩む。

異性の誰かと、こうして会うというのは久々だった。

特に、社会人になってからは仕事を覚えるのに必死で恋愛のあれこれにあまり頭がいかなかったからだ。


何もなかった訳では無い。合コン等で少しお付き合いをした人は何人かいた。でもどれも長く続かず、すぐに別れての繰り返しだった。

知咲が引っ込み思案なせいか、相手が飽きてしまうのか、物足りないのか、長く続かないのだ。


知咲は主張しないから。本当に好かれてるのか分からない。


いつか誰かに言われた言葉。


だって、ワガママ言って変な空気作りたくない。我慢してうまくいくならその方がいい。


ーーーーそうやって、自分を抑えてきた。


「・・・、」


「・・・う、」


「本郷??」


「・・・あっ、ごめん!なに?」


「何か考え事?何飲む?」


「あ、と、じゃあ、これを」


指差したものは美味しそうなクリームが乗ったコーヒー。


「じゃあ、これと、これを」


す、と支払いを済ませた森山に


「だめ、払うよ。」


「いや、今日は付き合ってくれたお礼だから」


「あたしも行ってみたかったから」


「じゃあ次の時に奢ってもらうよ」


ん?次?次もあるの?というような顔をしていたらしく、森山がそうだよ、と言っているかのように、にこっと笑った。


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