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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
明け方、気の早い蝉が鳴き始めた気配で暁は目を覚ました。
心地よい風が吹いていると思ったら、月城が暁に腕枕をしながら、団扇で風を送っているのだ。
ゆっくりと愛おしい男を見上げる。
月城は眼鏡を外した貌に安堵したような表情を浮かべた。
「…気がつかれましたか…?…良かった」
「僕はまた気を失っていたのか…」
毎回性交の度に気を失う自分が情けない。
目覚めた後、身体が綺麗に清められ、夜着を着せられているのも恥ずかしかった。

しゅんとする暁の貌を男は愛しげに撫で回す。
「…私がかなり無体をしてしまいましたから…」
…意識を失った暁を二度も抱いたのだと耳元で告げられ、暁は白い頬を染めた。
「…我慢出来ませんでした…貴方が愛おしすぎて…」
「…んっ…つき…しろ…」
…そんな風に熱く囁かれ、唇を奪われたら、怒る訳にもいかない。
暁は素直に男のくちづけを受ける。
そして、二人は目を合わせ微笑み合った。

「…何かお話があったのではありませんか?」
夜会の時に、暁が何かを言いたげな雰囲気だったのを月城は覚えていた。
暁は少し躊躇したが、遠慮勝ちに言い出した。
「…あの…来週の日曜日は、月城はお休み…?」
月城は思いを巡らすように遠くを見た。
「…来週の日曜日…15日ですね。…実は旦那様に同行して、宮中に参内することになったのです」
暁は、一瞬微かに落胆の表情を浮かべたがすぐにそれを飛び切りの笑顔で帳消しにした。
「凄いじゃないか!陛下にお目にかかれるなんて…。大変な栄誉だ」
月城は珍しく少し照れたような笑顔を見せた。
「…本当は従者の狭霧さんが同行される予定だったのですが、狭霧さんが私に経験を積ませる為にと、そのお役を譲って下さったのです。
…暁様、15日に何かあるのですか?」
暁は明るく首を振る。
「ううん。何でもない。大したことじゃないんだ。…君が伯爵と陛下にお会いすることの方が大事だ。気にしないで…」
月城はやや怪訝そうな貌をする。
「…本当ですか?」
暁はそれ以上、何も言わさないように月城に強く抱きついた。
「本当だ。…何もないよ。…それより…もう一度…して…」
「…暁様…」
暁は妖しく笑い、月城の唇をなぞる。
「…ちゃんと意識がある時に…もう一度…して…」
「暁様!」
月城は暁を堪らずに荒々しく抱き締め、それからは再び蒸せ返るように濃厚な愛の営みの時間となったのだ。


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