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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第8章 真夜中のお茶をご一緒に
「何かおっしゃいましたか?」
窓辺のカーテンを開きながら、泉が尋ねる。
「…べ、べつに…」
「今日は冬晴れの良い天気ですよ。…少し空気を入れ替えましょう。新鮮な空気は風邪の回復にも効果的ですからね」
甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
だからつい甘えてしまいたくなり、司はベッドの上で膝を抱え、愚痴る。
「…ついてないなあ…箱根…行きたかったのになあ…」
泉が振り返る。
「…恋人には振られて、楽しみにしていた箱根にも行けず…散々な年越しだ…」
口に出すと再び惨めな気持ちが蘇り、司は溜息を吐いた。
…嘘を吐かれていたし、自分の身体だけが目当ての真紀だったけれど、かつての真紀は優しく素敵な恋人だった。
この4年間の想い出はすぐには忘れられるものではなかった。
…また、あんな恋が出来るのかな…。
その人にすべてを捧げてしまいたくなるような恋を…。

「…あんな不誠実な恋人など別れて良かったのですよ」
きっぱりとした泉の口調に我に帰り見上げると、やや怒ったような表情をした泉が司を見下ろしていた。
「…泉…」
ふっと表情を和らげ、ベッドの傍に跪く。
「…箱根なら私がいつでもお連れいたします。芦ノ湖、箱根神社、仙石原、箱根の関所…。それから温泉も…」
包み込むような温かい眼差し…。
思わずときめいた胸の鼓動を抑える。
「…本当に?」
「はい」
優しく笑った貌はとても凛々しくて…認めたくはないが司好みの貌だ。

…「…貴方が好きです」
そう告白されたのはイブの夜だ。
密かに交わした淡いキスの記憶と共にまだ鮮やかに胸に残っている。
…だからこんなに近くで見つめられると、否が応でも甘くときめく自分がいるのだ。

…けれど…。
先程窓辺から見た光景を思い出し、つい意地悪を言いたくなった。
じろりと泉を睨みぼそりと呟く。
「…君はたらしだな」
「はい?」
「…さっき薫くんにキスされていたな」
泉は苦笑した。
「…ああ。」
「ああじゃないよ。…薫くんはやたら僕にライバル心剥き出しだし…。君、まさか薫くんと何かあった?」
ふっと薄く笑いながら泉は立ち上がり、窓を閉めに行く。
「何もありませんよ」
「本当に?」
振り返った泉がにやりと笑う。
「…もしかして、妬いていらっしゃるのですか?」
司はカッと貌を赤らめ、叫ぶ。
「や、妬く訳ないだろ!バカ!」
そうしてブランケットを頭から被ってしまった。
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