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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第8章 真夜中のお茶をご一緒に
夜半を過ぎ、また少し熱が出た司に泉は付きっきりで看病をした。
「ドクターも今夜辺りでお熱も下がるだろうと仰っていましたから、あと少しのご辛抱ですよ」
泉が励ますと
「…大丈夫だよ。僕は元々熱が出やすい体質なんだ…。付いてなくても平気だよ…もう遅いから、泉は休んで…」
気怠そうに、しかし泉を気遣う司に
「私のことなど気になさらなくて良いのです。
…司様はゆっくりお寝み下さい」
優しく答え、額の濡れタオルを替えてやる。
そうするとほっとしたような貌をして頷き、眼を閉じた


ややもして、静かな寝息を立てた司をじっと見つめる。
…本当は少し心細いのかもしれない…と、泉は思った。
小机に飾られた写真立てに眼を遣る。
日本に帰国する前に撮られたのだろうか、風間一家の家族写真だ。
日本人離れした端麗な若々しい父親に、美しく楚々とした…司に良く似た面差しの母親。
夫婦ともそのまま夜会に出ても遜色がないような上質な洋装をしている。
…人形のように愛くるしいまだ幼い少女は妹だろうか…ふわふわの西洋のお姫様のようなドレスを着て司の手をしっかりと握り締めていた。
司はレースの立て襟のブラウスにジレ、長めの丈のジャケットに細身のパンツという正に絵物語の王子のような姿で写っていた。
いかにも愛と経済的な豊かさに溢れた理想的な家族の肖像がそこにはあった。
たくさん愛されて育った若者が日本に帰国し、初めて味わう失恋…。
…さぞ傷つかれたことだろうな。
熱により白い頬は紅らみ、唇は茱萸のように赤い。
泉はタオルで白いうなじの汗を拭ってやる。
…半開きになった唇から微かな声が漏れた。

「…まさき…いかないで…」
泉の胸は司への愛おしさと、もどかしさで切なく痛んだ。
熱の為にやや汗ばんだ髪を、大切そうに撫でる。
「…そんな男は、早くお忘れなさい…」
愛の呪文のようにそっと囁くと、その紅い花弁のような唇に優しく唇を重ねた。

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