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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
和やかに朝食を摂りながら、話は孤児院の仁に及んだ。
暁は仁のことをとても可愛いがっている。
仁の父親はどうやら資産家の主人だったらしいが、愛人の母親は仁を残して病死した。
自分と境遇が良く似ている仁と無意識に自身を重ねている節もある。
また、人目を惹く綺麗な貌立ちをしているのも、愛でている理由のひとつらしい。
暁は薫のように綺麗な少年が好きなのだ。

「仁くんはとても賢くて、学校の成績も群を抜いて優秀らしいんだ。勉強熱心だし、上の学校に進学したいのなら援助をしてあげたいと思っている。もちろん大学も…」
そこまで考えているのかと、月城は眼を見張る思いだった。
「…それはとても良いことだと思いますが…」
しかし孤児院には他にも学校に通う子どもがたくさんいるのだ。
仁だけを特別扱いする訳にはいかない。
月城の言わんとしていることをすぐに察知した暁は、続ける。
「もちろん仁くんだけを特別扱いするつもりはない。
…縣商会で新たに奨学金制度を設けようと計画しているんだ。
学びたい希望がある子ども達全てに進学の機会を与えたい。
それから優秀で向上心のある子は将来、うちの会社で雇用しようとも考えている。
あの孤児院はシスター達の教育が行き届いているから、素直で良い子達がたくさんいるからね」
「なるほど。それは素晴らしいお考えですね」
正直、暁がそこまで親身に孤児院の子ども達のことを思い遣っているとは思わなかった。
暁の慈愛の深さに感動すると共に、そこには暁の成せない子どもへの想いを感じ取れてしまい…月城の胸は切なくなる。

最近は子どもが欲しいとは言わなくなったが、やはり子どもを育てることに拘りと熱意を持っていることは間違いない。
そのことを愛おしくもあり、どこか切なくも思う月城なのだ。




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