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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
珈琲を間に、しばらく二人は和やかに会話を交わす。
彼の名前は藍染涼と言うこと、年は22歳で実家は千住で、昨年まで日比谷のフランス料理屋にウェイターとして働いていたが、もっと様々な経験を積みたくて退職したこと、北白川伯爵家には教会の神父から紹介されて務めたこと…などを彼は自分から朗らかに語った。

「そう。…北白川伯爵家は勤め易いお屋敷だと思うよ。
綾香さんや梨央さんは優しくて良い方だしね。最近では綾香さんの影響で外国人の来客もあるし、夜会やお茶会も多くある。貴重な経験をたくさん出来ると思う。
長く勤められるといいね」
暁は彼にそう優しく微笑むと、カウンターの古伊万里の花器に飾ったばかりの桜の花にそっと触れた。
…月城、元気かな…。
やっぱり今日辺り、夜にでもお屋敷を訪ねてみようかな…貌を見るだけでいいから…。

…暁の心の呟きが聞こえたかのように、藍染が口を開いた。
「…この桜の花、もしかして月城さんが?」
びくりと震えた手が桜の枝に触れる。
「…え?どうして…?」
「すごく愛おしげに見ていらっしゃるから…」
余りにずばりと言い当てられて、暁は取り繕う余裕もなく、羞らいながら頷いた。
「…うん。…月城が丹精込めて育てている桜なんだ。家の庭に咲いていて、あまりに見事だったから切ってきた…」
白い頬を桜色に染めてそう告げる暁をじっと見つめ、藍染は硬い表情をした。
そして、独り言のように苦々しく呟いた。
「…そんなに暁様に愛されているのに…月城さんは…」
意味深長な言葉に暁は眉を寄せる。
「…え?何…?」
「…いいえ。…こんなこと、暁様のお耳に入れる訳には…」
そんな言葉を聞けば、尚更気になる。
暁は珍しく強めの口調で、藍染を問い詰めた。
「言って、藍染くん。月城に何かあったの?」

藍染は僅かの間、躊躇していたが、やがて重い口を開いた。
「…実は…昨日、見てしまったんです。
…温室で…月城さんが梨央様と抱き合っていらっしゃるのを…」
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