この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
壁に押し付けられ、くちづけをするような距離まで迫られる。
「…月城はどこだ?庇いだてすると、あんたにも嫌疑がかかるぞ」
愛を囁くような湿り気を帯びた声が鼓膜を撫でる。
暁は鬼塚の手を邪険に振り払い、睨みつける。
「僕の方が聞きたいくらいだ。
…月城はどこにいる?お前は知っているのではないのか?知っていて、僕を騙そうとしているのではないか?
それなら教えてくれ。月城はどこにいる⁈月城を僕に返してくれ!早く…早く返してくれ!」
最後は鬼塚を掴みかかり叫ぶ暁を、戻ってきた側近が慌てて止めに掛かった。
「貴様!少佐に何を…!」
鬼塚がすぐさま手を挙げ、制する。
「いい。構うな」
側近の兵士は不承不承引き下がる。
鬼塚が集まってきた部下たちにさらりと、しかししっかりと釘を刺した。
「振る舞いに気をつけろ。
仮にもこの男は縣男爵家の次男坊だ。
…あまり酷い扱いをすると上層部の貴族出身のお偉方がうるさい」
そして暁に眼を転じ、にやりと笑いながらまるで淑女に礼を尽くすように恭しくお辞儀をした。
「…俺たちは貴族だろうが華族だろうが危険分子や反逆者には容赦しないのが鉄則だ。
あんたは例外なのだから、ありがたく思え」
「ふざけるな!誰がお前なんかに感謝するか!
…月城は、危険分子でも反政府主義者でもない!」
鬼塚の隻眼の切れ長の瞳が冷たく光る。
「ではなぜ、月城はあんたを置いて失踪した?疚しいことがあるからではないのか?」
「…それは…」
鬼塚は再び暁を壁に追い詰める。
「あんたを愛しているなら、黙って姿を消したりはしないはずだ。…月城は、あんたを裏切ったんだ。あんたは騙されているんだよ。あの男に」
暁は渾身の力を奮い、鬼塚を押しやる。
「うるさい!お前に何が分かる!お前みたいな卑劣な人でなしに月城のことが分かってたまるか!」
震える唇を噛み締め、鬼塚を睨め付ける。

鬼塚は肩を竦めて見せる。
「…愛の力は偉大だな。それならば…」
黒い革のブーツが冷たい音を立てながら、暁の前に近づく。
隻眼の瞳はまるで底なし沼のように暗く、闇の入り口のようだ。
「…とくと拝見させていただこうか。
あんたと月城の…愛の絆とやらをな…」

そうして片頬だけで冷淡に笑うと、暁を見つめたまま振り返りもせずに部下に命じた。
「引き上げるぞ。縣暁は月城の仲間らとは無関係だ」



/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ