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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
暁は血眼になって月城を探し回った。
月城の交友関係を全て調べ上げ、帝大の同窓生の轟が反政府運動の首謀者だと突き止めてからは、そのアジトに足を運んだ。
…アジトはもぬけの殻であった。
既に憲兵隊の捜索の後であったらしく無残なほどに荒らされ…そこに集っていた人々の安否すら心配されるような有様であった。
暁はその場に座り込んだ。

自宅にも帰らずに他の危険な地下組織グループのアジトまで、取り憑かれたように月城を探し回っていた暁を礼也は漸く探し当てた。
そして抵抗する暁を羽交い締めにするように、松濤の屋敷に連れ帰った。
屋敷に着いてからも暁は気が狂ったかのように暴れ回った。
普段、穏やかで物静かで、決して乱れた様子など見せたことがない暁が別人に豹変したかのように取り乱す様子に光は息を飲んだ。

薫や菫はナニーにより遠ざけられ、司は言葉をなくし立ち竦んだ。
泉はそんな司の手をそっと握り、二人で痛ましげに暁の居室の扉を見つめた。

「放して下さい、兄さん!僕は月城を探さなくてはならないのです!月城は…策略に巻き込まれたのです!
どこかで死にかけているかもしれない…僕が助けなくては…!」
暴れる暁を礼也が背後から、その逞しい腕で抱き竦める。
苦渋を滲ませた声で叫ぶ。
「暁!行ってはならない!…月城は…恐らくお前のために姿を消したのだ!」
「…え?」
恐る恐る礼也を振り返る暁の貌は、憔悴しきり…また怯えていて、まるで親に捨てられた子どものように悲壮な表情を浮かべていた。
…あんなに美しく、艶やかだった美貌は打ちひしがれた花のように輝きを失っていた。
礼也は痛ましげにその頬を撫でる。
「月城は、お前のために姿を消したのだ。
…今朝、月城の親友が遺体で発見された。遺体は川から上がり…自殺と発表されたが、恐らくは特高か憲兵隊に嬲り殺しにされたのだろう。
変わり果てた姿だったそうだ。
…そして同時にその男の妻子が自宅から姿を消した。
行方は杳として知れない…。
男の妻は反政府運動の活動家だ。
月城が妻子を庇い共に逃走しているに違いない。特高や憲兵隊は未だに月城を共謀者と決めつけ、追っている。
…月城は、お前に嫌疑がかからぬよう…お前を守るために姿を消したのだ…」
暁の大きな瞳に水晶のような涙が溢れ出した。
「…そんな…そんなこと…って…!」
嗚咽を漏らす暁を礼也は黙って強く抱きしめた。

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