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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
礼也は大紋にキューバ産の葉巻を勧めながら、黒檀のキャビネットからブランデーを取り出した。
妻の光はもちろん、下僕やメイドも近づかせずに二人きりで書斎に篭もろうとする礼也に、何かしらの決意を大紋は感じた。
「月城のことで何か分かったか?」
バカラのグラスに極上のブランデーを注ぎながら、尋ねる。
「…いや、北陸の月城の実家に部下を行かせて調べたが、まだ立ち寄った形跡はない。
賢い彼のことだ。実家のように直ぐに追っ手が来るような場所には逃げないだろう。
…亡くなった轟の妻は身重だそうだ。小さな子どもも、いる。彼らを伴っているとしたら、そう遠くへは行っていない筈なのだが…」
眉を寄せながら、礼也からグラスを受け取る。
「…月城は一見クールに見えて実はとても情に厚い男だ。彼が親友の妻子を連れて逃げるくらいだ。
よほどの事情があるのだろう。
…あんなに愛し合っている暁を置いて失踪してしまったくらいだからな…」
大紋は確かめるように呟いた。
極上のブランデーも今や何の味もしなかった。
「…月城は恐らく轟のグループの何らかの謀略に巻き込まれたのだろうな。
辞表には覚悟の言葉が連ねられていたらしい。
…生き延びていたとしても我々の前に姿を現わすかどうか…」
大紋は眼を見張る。
「…そんな…!まさか彼はこのまま本当に姿を消すつもりなのか⁈」
礼也は苦しげにバカラの杯を煽る。
「月城は暁の伴侶であると同時に執事だ。
主人達の名誉を守る本能は骨の髄まで染み付いている男だ。
一度は危険分子の疑いをかけられた月城がおめおめと暁の前に現れるとは…彼の性格からして到底思えない。
…彼は、暁の名誉を命に代えても守る筈だからだ。
月城は北白川伯爵から尊い忠誠心の教えをストイックなまでに叩き込まれている筈だからな」
そう語る礼也の貌には見たことがないほどの苦悩の色が満ちていた。

「…もう月城が暁の前に現れないとすると、暁は永遠に彼を待ち続けることになる」
…自分の半身のように月城を愛し、求めている暁だ…。
死ぬまで彼を待ち続けるだろう…。
大紋にもそれは、痛ましいほどに予想出来た。
「…私はそんな痛々しい暁を見てはいられない」
いい捨てるように言葉を放つと、礼也は新しいブランデーを荒々しく注ぎ、水のように飲み干す。
そして感情を押し殺した声で告げた。
「…春馬。私は暁をフランスに行かせようと思う」

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