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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
礼也に伝えられた店は、新宿の花園神社の裏手にあった。
暗い闇の中、浮かび上がるその店は…店というより禍々しいほどに退廃美の雰囲気を湛えた…さながら欧州の貴族の狩猟の館のようであった。
外観は優雅で格調高い造りであったが、どこか背徳的な匂いが漂う…秘密めいた隠れ家のような店だ。

看板も出ていない…こんなところに本当に暁はいるのだろうか…?
半信半疑のまま、大紋は薄明かりのみ漏れている青銅の扉を押し開ける。

…中は視界がはっきりしないほどの紫煙が煙り、大紋は目を凝らす。
…甘い酒と外国煙草の匂い…

薄暗い店内には、小さな音で退廃的なシャンソンが流れていた。
…いつか街明かりの下で、また会いましょう…
昔みたいに…

昨今は徐々に禁じられつつある外国曲だ。
甘く気怠いドイツ女が歌う愛の唄が流れる店内には、女は1人もいなかった…。
見るからに妖しげな雰囲気を漂わせた男達が薄暗がりの中、酒を飲みながら見つめ合い、密やかに笑い合い、抱き合っていた…。

…こんなところに、暁がいるのか…?
信じられない思いに思わず立ち竦む大紋に、彫りの深い明らかに異国の血が混ざっているバーテンダーが静かに声をかける。
「お客さん、ここは会員制クラブですよ。失礼ですがお間違いでは…」
「…暁を迎えに来た…」
一か八か告げてみる。
バーテンダーは意外な風に眉を上げた。
「暁さんに?…突き当たりのテーブルですよ」
名前を告げただけですんなりと答えが返ってきたということは、常連なのだろうか…。
大紋は表情を険しくしながらバーテンダーに黙礼し、店の奥に進んだ。

店内を歩く大紋を見つめる男達の視線が痛いほどに突き刺さる。
…明らかに男を物色するような欲望の眼差しだ。
…こんなところに、暁が…?
受け止められない思いのまま、最奥のテーブルに着く…。

「…暁…いいだろう?今夜こそ…あんたを俺のものにしたい…」
身なりは上質だが、如何にも色悪な若い男に肩を抱かれ、ぎらぎらした欲情の言葉を耳元で囁かれ、暁は夜に咲く妖しい花のように笑っていた。

「…ふふ…どうしようかな…僕を満足させられるかな…?坊や…」
拒む訳でもなく、寧ろ挑発するようにその美しい黒曜石のように濡れた瞳で流し目をくれてやる暁に、大紋は思わず叫んでいた。
「暁!」



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