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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
そして、鬼塚は窓の外に眼を遣る。
子ども達の甲高い笑い声が聞こえてきたのだ。
丁度、近所の子ども達が学校に通うのに賑やかになる時間帯であった。
「…近くに学校が?」
暁も窓の外を見遣る。
顔馴染みの教会の男の子が暁に気づき、窓硝子越しに満面の笑みで両手を振る。
暁は思わず破顔して、手を振り返す。
「知り合いか?」
「ええ。この近くの教会の男の子です。…教会は孤児院も経営していて…僕は時々炊き出しをしたりしているので…」
…へえ…と感情を込めずに鬼塚は珈琲を口に運ぶ。
「…孤児院ね。…虐めと暴力が罷り通る最悪の場所だな…」
暁は眉を顰めた。
「あの教会はそんなことはありません。シスター達は厳しいけれどとても慈愛深く子ども達を大切に育てています。皆、明るくて元気で仲間を大切にする良い子ばかりです」
「それは稀な孤児院だ。あの子達は奇跡の恩恵に感謝すべきだな」
冷たい言葉…どこか苦々しげな影が鬼塚の頬に翳る。
「…鬼塚さん?」
「少なくとも俺がいた孤児院はそんな天国のようなところではなかった。…いや、そんな生温いもんじゃない。
…あそこは…地獄だった…」
薄い唇が冷たく歪み、吐き捨てるように呟く。

暁は眼を見張る。
「…貴方が?」
暁の反応を面白がるように笑う。
「俺は上州の水飲み百姓出身だが、俺が十二歳で妹が十歳の時に村は洪水に遭い家は流された。
幸か不幸か生き残った俺と妹は東京の親戚を頼り上京したが…親戚だって子沢山の貧乏所帯だ。二人の子どもを引き取る余裕はなかった。
民生委員に紹介されたのは、新宿の孤児院だった。
…今思い出しても反吐がでるほど酷いところだったぜ」
まるで独り言を言うように鬼塚は語り始めた。

「真冬なのに暖房もない、ベッドには南京虫が這い、もちろん食事は薄いスープに粗悪なパンが一枚…。
それすらも力のある古株のガキに奪われる。抵抗すると、俺が教師に殴られた。秩序を乱す奴は不要だからだ。けれど俺は幼い妹の為に我慢した…。
ここを出たら俺は兎も角、妹は生きては行けない。だから我慢した。
…けれどあるとても寒い冬の夜…。俺は妹の悲鳴に飛び起きた。妹の声の方に駆け出した。
暗い教会の礼拝堂の奥…。
…俺が見たものは…」
鬼塚の貌が初めて苦痛に歪んだ。
「…孤児院の校長に組み敷かれ、血塗れになりながら犯されていた妹だった…」
暁は息を飲んだ。




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