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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
新しい珈琲を新たなカップに注ぐ。
静かに置かれた珈琲を、鬼塚はゆっくりと味わった。
「…僕はやはり貴方が嫌いです」
カウンターの中から鬼塚を見下ろし、硬い口調で話し始める。
「ん?」
訝しげな眼差しが暁を見上げる。
「…僕は月城を追い詰めている貴方が許せないし、僕から月城を奪った貴方が許せないし、きちんと調べもせずに無実な人々を検挙する貴方も許せない。
貴方も、貴方の職業も嫌いです。大嫌いです」
…けれど…と、若干の温かい温度を感じさせる声で言い添えた。
「…私がもし、十二歳の貴方だったら…きっと貴方と同じことをしたでしょう…」
「…あんた…」
「そして、十二歳の貴方に何もしてあげられなかった自分が悔しいです」
鬼塚の隻眼が信じられないかのように見開かれ、だがすぐにそれは皮肉な笑みに取って変わられた。
わざと下卑た口調で甘く囁く。
「…あんた、これ以上あんたに惚れさせてどうするつもりだよ?…綺麗な奥さん…」
カウンターの上に置かれた白い暁の手を、素早く握りしめる。
暁は瞬間手を振り払い、憤然とカウンターの奥に消えた。
「言わなければ良かったです。もう帰ってください」
鬼塚はけんもほろろな言葉を聞きながら、可笑しそうに笑う。
紙幣を置いて立ち上がる。
「言われなくても退散するさ」
そして改まった様子で言った。
「…珈琲、美味かった」

やがて扉のカウベルの音が鳴り、店内から人の気配が消えた。
暁はカーテン越しにそっと窓の外を窺う。
…鬼塚の姿は、もうどこにもなかった。
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