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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
厨で大量の湯を沸かしていると、春がやってきた。
「まだ少しかかるよ。芙美さんは細っこいからね。
けれど破水する前にここに辿り着いて本当に良かったよ」
そして厨の縁に腰掛けて、泣きそうに不安げな顔をしている新吾に優しく話しかけた。
「坊や、お腹が空いただろう?千倉の海で取れた美味しい鰯の酢漬けがあるんだよ。炊きたてのご飯とお味噌汁でご飯にしようね」
食卓に並べられた春の心尽しの朝食を見て、新吾は目を丸くした。
…房総の名物だという鰯の酢漬け、取れたばかりの釜揚げしらす、飼っているチャボの産みたて卵は、綺麗な出汁巻卵になっていた。
庭で作っている茄子と茗荷の味噌汁、色鮮やかな胡瓜の糠漬け…そして、ぴかぴかに白く輝く炊きたての白米…。
普段、粗末な食事に慣れている新吾には信じられないほどのご馳走だったのだ。
「さあ、遠慮せずにお食べ」
春に声を掛けられ新吾はおずおずと箸を持ち、物も言わずに一心不乱に食べ始めた。
昨夜から、緊張のあまり碌に食べ物を口にしていなかった新吾は、ようやく子どもらしい食欲を取り戻したのだ。
「…すごく…すごく美味しい!」
箸を握りしめながら、嬉しそうに笑った。
春は目を細め、新吾の頬についたご飯粒を取ってやる。
「可愛いねえ…。いい子だね…」
そして、月城を見上げると頷いた。
「…生まれるのは明日だろう。けれどすぐに動こうとしちゃあいけないよ。お母さんには安静が必要だ。赤ちゃんにもね。
しばらくここでゆっくりおし」
優しいが頑として譲らない春の信念と思い遣りに、月城は言葉もなかった。
「まだ少しかかるよ。芙美さんは細っこいからね。
けれど破水する前にここに辿り着いて本当に良かったよ」
そして厨の縁に腰掛けて、泣きそうに不安げな顔をしている新吾に優しく話しかけた。
「坊や、お腹が空いただろう?千倉の海で取れた美味しい鰯の酢漬けがあるんだよ。炊きたてのご飯とお味噌汁でご飯にしようね」
食卓に並べられた春の心尽しの朝食を見て、新吾は目を丸くした。
…房総の名物だという鰯の酢漬け、取れたばかりの釜揚げしらす、飼っているチャボの産みたて卵は、綺麗な出汁巻卵になっていた。
庭で作っている茄子と茗荷の味噌汁、色鮮やかな胡瓜の糠漬け…そして、ぴかぴかに白く輝く炊きたての白米…。
普段、粗末な食事に慣れている新吾には信じられないほどのご馳走だったのだ。
「さあ、遠慮せずにお食べ」
春に声を掛けられ新吾はおずおずと箸を持ち、物も言わずに一心不乱に食べ始めた。
昨夜から、緊張のあまり碌に食べ物を口にしていなかった新吾は、ようやく子どもらしい食欲を取り戻したのだ。
「…すごく…すごく美味しい!」
箸を握りしめながら、嬉しそうに笑った。
春は目を細め、新吾の頬についたご飯粒を取ってやる。
「可愛いねえ…。いい子だね…」
そして、月城を見上げると頷いた。
「…生まれるのは明日だろう。けれどすぐに動こうとしちゃあいけないよ。お母さんには安静が必要だ。赤ちゃんにもね。
しばらくここでゆっくりおし」
優しいが頑として譲らない春の信念と思い遣りに、月城は言葉もなかった。