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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
芙美は唇を引き結ぶと、意思的な眼差しで月城を見上げた。
「…それなら…お願いがあります」
「何ですか?私にできることなら、何でもします」
「月城さんが、ずっと私たちの…いえ、私のそばにいてください」
月城の瞳が眼鏡越しに見開かれる。
「芙美さん…」
困惑した声を聞かない振りをして、芙美は月城に抱きついて懇願する。
「月城さんが私のそばにいて下さい!それなら私は支那にはいきません!
…だって…だって私は…私は月城さんが…」
瞬間、月城は芙美の腕を振りほどき、聞いたこともない厳しい声を発した。
「それ以上言ってはいけません」
「どうしてですか?私は月城さんが…」
月城は首を振り、芙美の肩を抑える。
「貴女は轟の最愛の奥さんです。そして新吾くんと七海ちゃんの大切なお母さんです。
貴女は轟を突然喪った悲しみを私で癒そうとしているのです。轟の代わりを求めているのです」
「…違います!私は…」
月城は芙美の瞳をじっと見つめ、首を振った。
「…誰も、最愛の人の代わりにはなれないのですよ…。
私は轟の代わりにはなれません。
…なぜなら私には、愛するひとがいるからです」
芙美は息を呑み、唇を震わせた。
「…好きと…言わせてももらえないのですか…?」
「それを言う相手は、私ではありません」
うなだれた芙美に、月城は穏やかに声をかけた。
「…いつか、芙美さんが…轟の代わりなどではなく真剣に愛するひとに出会えたら…その言葉を言ってあげてください。それまでは、大切にとっておいて下さい」
芙美は泣き笑いの表情を浮かべ、目尻の涙を拭った。
「…おばあちゃんになってしまうかも…」
月城は目を細め、微笑った。
「おばあさんの芙美さんは、きっと可愛いですよ」

「…ほんとに…口が上手いんだから…。だからハンサムは嫌だわ」
そっぽを向いて照れ隠しに憎まれ口を聞いた芙美は、ふと、春の家の方向を食い入るように凝視している月城に気づく。
「…月城さん…?どうしたの?」

…同時に、遠くから小さな叫び声が聞こえた。
「月城!」
呼応するように、月城が叫んだ。
…それは、芙美が今まで聞いたことがない、胸が痛くなるような痛切な叫び声であった。
「暁様…!」




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