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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
月城は自分の眼と耳が信じられなかった。
…今、私の目の前に駆け寄ってくるあのひとは…!
「月城…!」
なだらかな砂の丘陵に脚を取られながらも、必死に駆けてくる…あのひとは…!
「暁様!」
…行ってはならないという理性を裏切り、勝手に脚が走り出す。
「月城…!」
転びそうになりながら、必死で駆け寄る暁の姿が次第に近づく。
砂浜に脚が埋まり、縺れて倒れこみそうになる暁の手を掬い上げるように引き寄せ、抱きしめる。
密やかな夜に咲く白い花のような薫りが掠める。
…夢にまで見た…暁様だ…!

己れの胸に抱きしめた暁は、はっとするほどにか細く、強く抱けば砕けてしまいそうであった。
「…暁様…!」
随分痩せてしまわれた…。
自分のせいだ…。
月城の胸は慚愧の想いに激しく痛む。
「…馬鹿…馬鹿…月城の馬鹿…!…僕を…僕を…おいていった…!…黙って…置き去りにした…!
一人にしないって約束したのに…!」
「暁様…!申し訳ありません…!」
子どものように泣きながら月城の胸を拳で叩く。
「…君が生きているか、死んでいるかも分からず…僕は…毎日…不安で不安で…」
しがみついている暁の熱い涙が月城のシャツを濡らす。
月城はその華奢な背中を強く強く抱きしめる。

「…許して下さい…。貴方に反逆者の汚名を着せる訳にはいかなかったのです。貴方の名誉は私の生命にも等しいのです。貴方の美しい人生を汚す訳にはいかなかったのです…」
暁は涙に濡れた美しい白い貌を上げる。
長く濃い睫毛には水晶のような涙が絡まり、夜の湖のような黒い瞳には月城が映し出されていた。
暁は怒りの眼差しをして月城を見る。
「僕の名誉?何を馬鹿なことを…!
君と僕は対等のはずだ。もし君の嫌疑が僕にかかったら、僕はそれを甘んじて受けるよ。
だって僕と君は二人でひとつなんだろう?
僕達は離れてはいけないんだ。
君の問題は僕の問題だ。二人で乗り越えてゆくんだ。
そんなことも…わからなかったの?」
暁の濡れた白い頬にそっと手を伸ばす。
温かい…暁の体温が月城の体内にゆっくりと流れ込む。
…暁の元を離れてから、すべての感情を封じ込めていた。
それが一気に溶け出してゆく。

「…私は馬鹿です…。貴方なしで生きられると思っていた…どうしようもない愚か者です…」
月城は両手で暁の貌を引き寄せ、さながら初めてのように愛おしみ、唇を重ねた。



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