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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
「…あの方が…月城さんの最愛の方なんですね…」
ゆっくりと自分の傍に来た春に、芙美は呟く。
「そう。縣暁様。男爵家のご令息さ」
「…すごく綺麗な方…」
…月城の愛するひとが男性だったのには驚いた。
けれど、そのひとの輝くような美貌を見て、腑に落ちた。
月城が語っていたそのままの美しさだったからだ。

「お二人は色々な困難を乗り越えて結ばれてね…。
だからこんなことで離れ離れになっちゃいけないんだよ。
愛する二人は一緒にいなくちゃね」
春の言葉には芙美に穏やかに諭すような温度があった。
「…春さん、私が月城さんのことを好きになっていたこと…気づいていらしたんですね」
恥じ入るように俯いた芙美の肩を、春は優しく叩いた。
「無理もないよ。あんたはすごく疲れていたのさ。
疲れている時には、夢を見たいものなのさ。
…あんな…お伽話に出てくるような美男子に、ちょっとときめいたってバチは当たりゃあしないよ。
…あたしだって…もう四十も若けりゃねえ…惜しいことをしたよ。若いときゃあ、千倉小町って言われていたんだからね。月城さんだって、口説けたかもしれないねえ」
「春さんたら…」
芙美は笑いながら涙を流した。
春は手拭いで芙美の涙を拭いてやる。
「…あんたはまだ若い。しかも別嬪さんだ。
これからいくらでも良いことはあるさ。あたしが保証するよ。
…だけどね、意地を張ってちゃあ幸せにはなれない。
今、自分に何が一番大切か、よおく考えてごらん。
あんなに可愛い子どもが二人もいるんだ。
願ったって容易く持てるもんじゃあないよ。
あの子達を大切に育てて幸せにするんだよ。
そうすればあんたも必ず幸せになる。
あたしはいくらでも力になる。
ずっとここにいてくれていいんだ。
あたしは新吾ちゃんも七海ちゃんも可愛くて仕方がないんだよ。
…だから頼むから、危ない真似だけはしないでおくれ」
「春さん…!」
春の温かく親身な言葉が、芙美の胸に染み入る。
芙美は轟が亡くなってから初めて、声を放って泣いた。決壊したように流れる涙を、いつまでも止めることができなかった。
春は何も言わずに、芙美の髪を母親のように優しく撫で続けたのだった。
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