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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
月城は離れの和室の縁側に座り、夜天を振り仰ぐ。
夏は霞がかり、星が探しづらいかと思っていたが、ここは田舎で空気が澄み切っているせいか、息を飲むほどにあまたの星が瞬いていた。
闇の向こうから、夜の湿気を含んだ潮風が柔らかに吹いてくる。
間断なく聞こえるのは、波の音だ。

暁は湯を使っている。
春が気を遣い、隣接した離れに二人の床を延てくれたのだ。

…ここに、暁様がいらっしゃることがまだ信じられない。
もう二度と会えないと覚悟していたのだ。
だから不意に、暁と会えたことは自分の妄想なのではないかと、やや神経症じみた不安が月城を襲った。
月城は落ち着かない様子で立ち上がり、湯殿に向かおうとした。

…と、部屋の襖が静かに開き、暁が現れた。
「どうしたの?月…」
驚いた様子の暁を何も言わずに強く抱き竦める。
「…夢ではないかと、思っていたのです。貴方が…ここにいるなんて…まだ信じられない…」
暁は目を閉じて、男の胸に身を委ねる。
「…夢じゃないよ。…僕はここにいる…」
「暁様…!」
暁のか細い指が月城の背中にしがみつく。
「…月城の匂いだ…。ずっと…夢に見ていたよ…」
「申し訳ありませんでした…。私のせいで…貴方はこんなにもお痩せになってしまって…」
苦渋を滲ませた声で詫びる月城に、暁はやや蠱惑的な眼差しで見上げて見せた。
「君が居なくなって、僕は荒れたよ」
月城の端正な眉が寄せられる。
「…十数年ぶりに、あの店に行ったよ」
「あの店?」
暁は淫靡に笑った。
「春馬さんと別れて、自棄になって憂さ晴らしをしていたあの店だ」
月城の瞳が見開かれ、苦しげに細められる。
「暁様…!」
月城の首筋に、ほっそりとした白い腕を絡める。
「今度は君の代わりに、僕を探しに来た春馬さんに連れ出されたよ。
…それで僕は…」
暁の唇が月城のそれに塞がれる。
激情に駆られたようなくちづけが交わされる。
「…大紋様と…何かあったとしても、それを憤る資格は私にはありません。けれど…もしそうだとしたら…!」
激しいくちづけに暁の吐息が乱され、息も絶え絶えになる。
男を軽く睨みつけ、その唇を指でなぞる。
「勝手な男だ…君は…。
勝手に僕を置き去りにして、勝手に嫉妬する」

…けれど…どんなことをされても、君しか愛せない…。
最後の言葉は、男の唇に奪われ、形を成すことはなかった。



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