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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
不意に場違いな笑い声が響き渡った。
礼也がさも可笑しくてたまらないように、声高に笑い続けていた。
「美徳?忠義?何を今更!そんな前時代の遺物みたいなことを真面目に言っているんだ。君は大層賢いと思っていたが、そこまで主人に盲目な偏屈でつまらない人間だったのか?」
さすがに月城は端正な眉を顰めた。
「礼也様…!いくら礼也様でも些かお言葉が過ぎるのでは…」
「ああ、いくらでも言ってやるさ。君が拷問され…万が一、運良く生き延びたとしても、最前線に送られ犬死し…それでも北白川伯爵は君を褒め称えると思うのか?
…いや、伯爵はお怒りになるだろう。命を粗末にすることを伯爵は一番嫌われる。
伯爵が尊ぶものは矜持や美徳ではない。
生きることだ。無様でも卑怯でもいい。
正しい行いの上の逃避なら、伯爵はそれをお認めになるはずだ。
…月城、伯爵は君を生かす為に君を北陸の貧しい漁村から見出されたのだろう?
その君が今、こんなに取るに足らないことで犬死したら…伯爵はどんなにお怒りになることだろう。
伯爵は君に生きて欲しいとお望みになるはずだ。
愛する者と共に…生き伸びて欲しいと…!
…君は何十年も伯爵にお仕えして、そんなことも分からぬほどに盲しいたのか⁈」
激しく厳しい言葉が、礼也の唇から放たれた。
…それは、月城が初めて聴いた礼也の飾り気のない…真っさらな真心の言葉であった。

「…礼也様…!」
礼也は感極まる月城の手を、強く握りしめた。
そして、打って変わって懇願するような声で静かに語りかけた。
「頼む、月城。生きてくれ…!暁と二人でフランスに渡ってくれ。
治外法権だ。憲兵隊達も外国までは追っては来れない。
そして暁と二人で…生き延びてくれ!幸せになってくれ!私の一生の頼みだ…!」
礼也は心の底から、そう絞り出すように言い放つと、静かに嗚咽を漏らしたのだった。
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