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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
礼也は慌ただしく動き始めた。
「暁、生田に手伝って貰って支度をしなさい。
お前の当座必要な洋服と身の回り品と…。余り多いと目立ってしまう。鞄ひとつにまとめるように。
月城は私のもので我慢してくれ。今、生田に取りに行かせている。
…似たような背格好で良かった。いや、私の方が5ミリ背が高いはずだがね」
わざと戯けて笑わせた。

すぐに戻ると言いおき、礼也は部屋を出た。
暁は物も言わずに月城に抱きついた。
「暁様…」
「良かった…!月城が警察に行かないと決意してくれて…!…月城が…死んだらどうしよう…て…」
暁のか細い身体が小刻みに震えていた。
「暁様…」
…私は、この全身全霊で私を愛してくれる美しいひとに、一体どれだけのものを返して差し上げられるのだろうか…。
月城は暁を強く抱きしめ、自分に言い聞かせるように語りかける。
「…暁様、ご心配をおかけしました。
けれど私はもう決意いたしました。貴方と片時も離れない。貴方と生き延びる。その為ならば、何でもいたします」
「…月城!」
暁が月城の胸から貌を上げ、涙に潤んだ黒い瞳で見上げる。
「絶対だよ…」
必死に母親と約束を交わす子どものように念を押す暁を、愛おしげに微笑む。
その艶やかな黒髪を優しく撫でる。
「はい。もう貴方から離れません。…一生…死ぬまで…」
「月城…!」
暁が月城の頭を引き寄せ、唇を重ねる。
震える柔らかな唇を、月城は安心させるように包み込み、優しく舌を絡めた。
月城の濃密なくちづけに、暁の身体の強張りが解けてゆく。
ゆっくりと唇を離し、見つめ合う。
「けれど一度外国に出国したら、簡単に帰国は出来ませんよ。私はお尋ね者になるのですからね。
ましてや、今は戦時下です。これから民間人の渡航は益々困難になります。…もしかすると二度と日本の土は踏めないかもしれない…」
暁は穏やかに微笑った。
「構わない。君が側にいてくれたら…そこがどこであろうと、僕には天国だ…」
…無垢な天使のような微笑み…。
月城は、その輝くような透明な美貌に見惚れる。
「貴方は…何度私を夢中にさせたら気が済むのですか…」
幸せそうに暁が微笑う。
「死ぬまで夢中になっていて…」

…甘い愛の時間は突然終わりを告げた。
けたたましい足音…。
生田の切迫した叫び声が響いた。
「暁様!月城様!お逃げ下さい!憲兵隊が参りました!」







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