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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
二人は息を呑んだ。
月城が暁を庇うように、前に立ちはだかる。

「じじい、どけ!その部屋に月城がいるのだろう?」
…聞き覚えのある声…。
鬼塚少佐の声だ。
「お帰り下さい!当家はお約束した方でないとお取り次ぎできないことになっております」
言い争う声の後、
「何を貴様!少佐に対して何たる不敬!」
熱り立つ若い憲兵らしき声が響いた。
このままでは生田に害が及ぶと判断した月城が、暁を後ろに下がらせたまま、扉に近づいた。

扉を開き、鬼塚少佐の前に立つ。
「私はここにいます。逃げも隠れもしません。だから生田さんに手を出さないで下さい」
凛とした月城の声が、辺りに響いた。
隻眼の憲兵隊将校、鬼塚は月城を認めると暫し睥睨するように見ていたが部屋の中の暁に眼を遣り、にやりと笑った。
「…麗しの姫君と漸く再会か。さぞや感動的な場面が繰り広げられたことだろうな。
…俺たちみたいな下衆の集団が邪魔をして悪かったな」
…だが…と、冷ややかな声色で言い放つ。
「縣さん。残念だが、この男には危険人物の嫌疑がかかっている。…署までご同行願おうか」
「鬼塚少佐!待って下さい!」
鬼塚に詰め寄ろうとする暁を押し留め、月城はその怜悧な美貌のまま口を開いた。
「私は危険人物などでありません。警察署に行くつもりもありません」
鬼塚は小さく嘲笑する。
「はいそうですかと引き下がるとでも思うのか?」
月城は表情ひとつ変えずに鬼塚を見た。
「…鬼塚少佐。私は貴方と取引がしたいのです」
「取引?」
鬼塚の片方の眉が跳ね上がる。
月城はかつての優雅で成熟した大人の執事の物腰のまま、微笑んだ。
「…貴方のとても大切な秘密についてです。
貴方と二人で話がしたい。
お人払いをお願いします」
鬼塚の表情が初めて変わった。
「貴様…!まさか…!」
「ご存知ない部下の方も多いでしょう。
…その方々の前で明らかにしないのは、私のせめてもの誠意です」
氷の美貌が涼しげに微笑む。
「…どうぞお人払いを…。話はそれからです」

鬼塚はぎりぎりと唇を噛み締め、暫しの沈黙ののち、叫ぶように命令した。
「屋敷の外で待機しろ」
一人の部下の憲兵が戸惑うように声をかけた。
「…し、しかし…少佐殿…」
「言う通りにしろ!屋敷の外で待て。見張りも怠るな!」
「はっ!」
部下達は敬礼をすると、一斉に階下へと降りて行った。



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