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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
大紋は全ての思いを胸に仕舞い込み、礼也を呼ぶ。
「礼也。早く二人を車に乗せてくれ。出航までにあまり時間がない」
…そして…
「…月城…暁を頼む…。…僕が言うのは烏滸がましいが」
「いいえ…いいえ!大紋様!このご恩は一生忘れません…!」
月城が深々と頭を下げた。
「元気で…。いつか、また…」
…もう二度と、会えないかも知れない。
だから、万感の想いを込める。
「はい。大紋様も、どうぞお健やかに…」
月城の腕の中には暁がいる。
涙に潤んだ瞳は真っ直ぐに大紋を見つめていた。
言葉はなかった。
もう、言葉は必要なかったのだ。

我に返った礼也が、二人を急かす。
「さあ、行くぞ。泉、春馬を頼む。
手当をしたら、直ぐに病院に運んでくれ。絢子さんにも連絡を…」
月城に抱かれるように暁は部屋を出た。
扉が閉まる最後まで、振り返りながら…。
それで、充分だった。

最初の別れは自分が暁に背を向けた。
心が引き千切られるような別れだった。
暁の貌は見ることが出来なかった。
そののち、暁が月城と巡り会い愛し合い、何度も密かに暁を見送った。
切ない恋情を抱えながら…。

だが今日は違う。
暁と月城の無事と幸せを心から願い見送れた。
…寂しくて堪らないが、二人の幸せだけを祈ることができた。
…僕も少しは成長できたのかな…。
独りごちて小さく笑う。

「大紋様、痛みますか?」
巧みに手当しながら、泉が気遣わしげに尋ねる。
「いや、大丈夫だ。
…彼は敢えて外して撃ったようだからね」
月城に縛り上げられ、気を失ったままの鬼塚を見遣る。

「…暁様…行っておしまいになられましたね…」
大紋は月城譲りの端正な貌立ちをしたこの家の副執事を見上げる。
…彼もまた、あの類い稀なる美しいひとに心を奪われた一人なのだった…。
「寂しいかい?…君の兄さんも行ってしまうからね…」
泉は首を振った。
「いいえ。暁様が…お二人がお幸せになるならば、それで良いのです」
「僕も同じ気持ちだ」
二人は貌を見合わせ、微笑んだ。

部屋の隅に転がっていた鬼塚が低く唸りながら悪態を吐く。
「ふん…ブルジョワめ。海外に逃げて第二の人生か…。金持ちは幸せだな」
「これから始まる長い戦争で、恐らく二人は二度と祖国の土は踏めまい」
鬼塚はおし黙る。
「…だが、二人は死ぬまで一緒だ。…永遠に…」
自分に語りかけるように結んだ。





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