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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
「…もう…。本当は今日は、君と午前中から行きたいところがあったのに…」
ダイニングテーブルに着きながら、暁は可愛らしい頬を膨らませる。

月城は焼きあがったばかりのバケットとハーブのオムレツを暁の前に運び、澄ました顔で微笑む。
「それは、私のせいでしょうか?」
暁はむっとして口を尖らせる。
「…だって‼︎」

一度、愛し合ったあと、それだけで満足するはずもなく、意識のない暁を再び月城は組み敷いた。
今度は正常位で抱かれながら、暁は譫言のように抗った。
「…もう…できない…やめ…て…」
淫靡な隠花植物のような身体を一度味わい、獣性が目覚めた月城がそれで満たされるわけもない。
「…まだです。…まだ貴方が足りない…」
そう熱く囁きながら、暁の身体を貪り尽くした。
暁は意識半ばのまま恣意的に極めさせられ、体内にしたたか熱い精を放たれ、泥のように眠った。

…次に起きた時には身体は綺麗に清拭されてはいたが、時計が12時を指していて、暁は小さく溜息を吐いたのだ。

「…君と過ごせる時間は貴重なのに…」
月城が入れてくれたカフェオレを膨れながら飲む。
…休日の食事はいつも月城が作ってくれる。
麻のギャルソンエプロンを付けた月城は、痺れるほどに姿が良く、暁は思わず見惚れてしまいそうになったが、自分は今怒っているのだという態度を崩すわけにはいかずに、表情を引き締める。

「さあ、オムレツが冷めますよ。…今日はオレガノを入れてみました。庭のハーブがだいぶ育ちましたので…」
涼しい貌で勧められ、暁は一口オムレツを口に運ぶ。
「…美味しい…!」
暁は眼を見張る。
卵の円やかな味に爽やかなオレガノの風味が加わり、食欲を唆る。
「良かった。…暁様は食が細くていらっしゃるから、メニューに苦労します」
眼鏡の奥の目が優しく微笑みかけ、暁は思わず俯く。

「君は狡い…」
「…?」
「…君が僕にしてくれることは全部嬉しくて…だから、僕は君を怒る気力が失せるんだ…」
「…暁様…」
月城がテーブル越しに手を伸ばし、暁の貌を上向かせる。
「貴方が余りに可愛らしくて、我慢できませんでした…。お詫びします」
穏やかに詫びる月城に、暁は首を振る。
「いいんだ。本当は…嬉しいんだ。君に求められることが…。…ただ、君が僕の身体に…飽きはしないかと…それが心配なんだ…」
月城は眼鏡の奥の眼を見張った。








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