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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
光が小さな赤い革張りの手帳を月城に手渡す。
「パリは日本人が多いわ。まさかパリまで日本の特高や憲兵が追ってくるとは思わないけれど、もし、危うくなったら…ここを頼ってみて」
渡された手帳には、ニースのホテルの住所と名前…。
そして、その頁には洒落たスーツ姿の大層目を惹く美しい西洋人の写真が挟まっていた。
…写真にはサインとメッセージ…
…最愛のヒカルに永遠の愛を…フロレアン・デュシャン…

光は悪戯めいた目配せをした。
「私のかつての恋人よ。フランスでは有名な画家なの。
今は、故郷のニースで絵を描きながら暮らしているの。
時々、手紙をくれるのよ。
そのホテルは彼の実家…。
彼はまだ私をとても好きでいてくれているわ…。
だから貴方達のことも全力で守ってくれるはず」

礼也が仏頂面で唸った。
「背に腹は変えられないとはこのことだ。
…異国の地では、どんなコネクションでも大切にしなければならない」
光はにっこりと笑って礼也にキスをした。
「寛大な貴方が大好きよ、礼也さん」

月城が頭を下げる。
「光様。恐れいります。ありがたく頂戴いたします」

ナニーに密かに連れてこられた薫と菫が到着する。
足元には、カイザーが嬉しそうに尻尾を振って暁を見上げていた。

薫は美しい瞳に涙を溜めながら、暁に抱きついた。
「暁叔父様。僕…フランス語、ちゃんと勉強するよ。大嫌いだけどちゃんと勉強する!
それで戦争が終わったら、フランスに行く。叔父様と月城に会いに行く!だからそれまで死なないで!絶対だよ!」
薫の素直な言葉に、暁は薫を力一杯抱きしめた。
「待ってるよ。薫。お母様の言うことを良く聞いて…君はいい子なんだから。…お母様と喧嘩をしてはだめだよ」
薫は頷きつつも、小さく呟いた。
「…それは…約束できないかも…」
光が素早く薫の頭を小突いた。

菫がナニーの胸から暁に手を伸ばす。
「暁おじちゃま!ふらんすにいっちゃうの?しんこんりょこう?」
菫を抱き上げて、暁は涙を潤ませて笑った。
「そうだよ、菫」
菫は傍らに立つ月城を大きな瞳でじっと見つめ、内緒話をするように暁に耳打ちした。
「おじちゃまのだんな様、とてもハンサムね。このひとなら菫、ゆるしてあげるわ」
暁はミルクの薫りがする小さな身体を優しく抱きしめた。
「…ありがとう、菫。大好きだよ…」


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