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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
皆と慌ただしく別れを惜しみ、暁と月城は礼也にいざなわれ、裏玄関へと向かった。
裏玄関では生田が二人の手荷物を持ち、待っていた。
暁を見ると、生田は初めてくしゃりと温厚な貌を崩した。
「…暁様、どうか…お元気で…。あなた様のお幸せを毎日お祈りいたしておりますよ」
「…生田…!」
生田は暁が浅草長屋から礼也により救い出され、この屋敷に引き取られた時から、まるで優しい祖父のように慈しみ大切に傅かれ、世話をされてきた。
彼は暁の生母のことで少しでも暁を貶めるメイドや下僕がいたら即刻クビにした。
言葉は少ないが、いつも暁が遠慮せずに暮らせるようにさりげない心配りを絶やさない執事だったのだ。
暁は涙を堪えて、老執事を抱きしめる。
「生田…、僕は…君が大好きだったよ…」
礼也は出来る限り暁といる時間を大切にしてくれたが、仕事柄多忙で、常に側には居られなかった。
そんな中、生田がきめ細やかに暁のことを慮ってくれたから、暁は伸びやかにこの屋敷で成長してゆけたのだ。
「暁様…。私もですよ…。貴方様のご成長は私の生き甲斐でした…」
「生田…!」
暁は、自分が如何に周囲の人々に愛され、大切にされてきたかを改めて実感する。
「…ありがとう。生田も元気でね…いつまでもここで、兄さんや義姉さんや薫や菫を守って…」
生田は何時もの穏やかな品位のある微笑を浮かべ、頷いた。
「…はい。老いぼれではございますが、精一杯勤めさせていただきます…」

月城が生田に頭を下げる。
「生田さん、弟を…泉をよろしくお願いいたします」
生田は月城の手を握りしめた。
「お任せ下さい。泉は今や立派な執事です。
何の心配もございません。
…月城様、暁様を…どうぞよろしくお願いいたします。
お二人で、末永くお幸せに…」
二人の執事はさながら永の別れをするかのように、見つめ合い言葉を詰まらせた。

…その時…。
けたたましく扉が叩かれ、やがて体当たりする音と共にそれは乱暴にこじ開けられた。
その場にいた全ての人間が、息を飲む。







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