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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
月城は波止場の倉庫のガス灯の下、手紙を開いた。
…見慣れた、美しい筆跡は…梨央のものだ。
月城は瞬きもせずに、その手紙を読んだ。

…月城、時間がないので本当に伝えたいことだけを、綴ります。
幼い頃から、私を守ってくれて、この家を守ってくれてありがとう。
貴方にはいくら感謝してもしたりません。
貴方のお陰で、私は寂しい思いをすることもなく、幸せに成長することが出来ました。

月城、貴方はきっと自分を責めていることでしょう。
執事を辞職したこと、お父様との約束を違えてしまったこと…。
けれど、それは違います。
私はずっと、貴方が自分自身の幸せを求めてほしいと思っていました。
己れを殺し、完璧な忠誠心でひたすらに私達に仕えてくれた貴方…。
同時に、愛する暁さんを孤独にしなくてはならないことに深く悩んでいることも…私は気づいていました。

…ごめんなさい。私がもっと早く、貴方を私達から…この家から解放して差し上げるべきだったのに…。
貴方に守られている安堵感は、代え難いほどに心地よく、私は卑怯にもそれを言い出せなかったのです。
私を、許して下さい。

月城、私は大丈夫です。
なぜなら、私には愛するお姉様がいらっしゃるからです。
お姉様がいらして下さるから、何があろうと強く生きてゆけます。

だから、貴方は全ての枷から解き放たれて、暁さんと幸せになって下さい。
新たな人生を、暁さんと共に自由に歩んで下さい。
…二人が幸せになることだけを考えて下さい。

ロンドンのお父様も、貴方の幸せを願っておられます。
いつか、貴方が暁さんと会いに来てくれる日を楽しみにしていると、私に伝えてくれました。

…だから、月城。幸せになって。
私に綾香お姉様がいるように、貴方には暁さんがいます。
愛するひとのそばにいられたら、人は幸せになれるのです。
…お姉様が、私に教えて下さいました。
だから、貴方も暁さんと幸せになって下さい。
貴方と暁さんは、永遠に一緒なのですから…。

親愛なる月城へ、愛を込めて…。

月城は手紙を握りしめて、声を押し殺して泣いた。
胸の内に、ひたひたと温かい愛が満ちてゆくのを感じながら、涙を流した。
…月城の苦悩と罪悪感は、梨央の無垢な愛が洗い流してくれた。
そのことに感謝しつつ、長く敬愛し続けて来た美しき女主人との長の別れを、改めて噛み締めるのであった。






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