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隠密の華
第11章 十

「ところで、桐も元気か?」

「ええ。相変わらず憎たらしい奴ですが、元気です」

「……お前には辛い思いをさせているな。すまない」

唐突に申し訳なさそうに設樂様は、笑顔の私へ向かって謝る。……本当に優しい方だ。偉ぶらず、部下へも頭を下げてくれる。

「いえ」

「本当に好きな男と夫婦になりたかっただろう……」

「……そんな事は」

「白夜はどうしている?優しいか?」

「ええ。優しくて尽くしてくれます……」

ただ何気なく設樂様と会話をしていただけだったが。続けられた設樂様の言葉を聞くと、私は困惑した。

「その様子だと、本当にアイツに惚れたか?」

「そんな馬鹿な!まさか、そんなわけありません!」

設樂様は私を見て微笑むだけ。……これは絶対、私が白夜に惚れていると思っている。否定すればする程、誤解は解けない気が……。


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