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終止符.
第11章 うつろい
「ありがとう奈緒。そ、それじゃ、ここで解散です。皆さん…気をつけて帰って下さい。あ、えーっと明日は部長にちゃんとお礼を言ってね。お疲れさまでした。」

涙を拭きながら沙耶が言うと、一人ひとりが奈緒と握手したり、言葉を掛け合って別れを惜しみながら席を立って行った。

「明日から奈緒のいないランチかぁ…」

千秋が寂しそうに言った。

「ごめんね。でもそのうち新人が来て賑やかになるわよ。」

「また会おうね。」

「うん、またね。」

「沙耶、幹事お疲れさま。明日また会社で。」

「オッケー千秋、今日はお疲れさま。明日ね。」

千秋を見送った後、最後に奈緒の前に立ったのは多田だった。

「ちょっと話がしたいんだけど、ダメかな。」

「えっ…」

奈緒は戸惑った。
となりには沙耶がいる。

「ん? 多田さん、それは奈緒と二人っきりで、という事ですか?」

沙耶がちょっと冗談めかして言った。

「あ、あはは。まぁ、できれば。」

「ふ~ん。奈緒、どうする? 彼は奈緒と二人で話がしたいって私の前で言ってのけたわよ。」

多田は奈緒達より三つ年上だったが、その気安さから沙耶からはよくからかわれていて仲が良かった。

「さっき、撃沈されたのに?」

また沙耶が言った。

「あはは。酷いな寺田さんは。」

「奈緒、どうする?」

「頼む! お願いしますっ!」

必死に頭を下げる多田を見て、沙耶が奈緒を肘でつつき、ウインクをしながら囁いた。

「彼は安全だよ。」

奈緒は逃げ出したかったが、多田と仲の良い沙耶の手前、断れなくなってしまった。

「少しだけなら…」

「だってさ…」

「よし、ありがとう。なんか…寺田さんのお陰だな。あはは。」

「終電までにはちゃんと帰してくださいね。」

「約束する。」

「それじゃ、私はお会計を済ませてから森下さんに送ってもらわなくちゃ。」

「ごちそうさま。立花さん、行こう。」

「はぁ…」

奈緒は不安そうな顔で沙耶を見ながら多田の後に続いて店を出た。

「あっ…しまった、純の事忘れてた……でも……奈緒にはやっぱり年上なのかな…」

沙耶は独り言を言った。

店の外で沙耶を待っていた森下が多田に声をかけた。

「えっ? 多田さん、二人でどこに?」

「ただの散歩。」

「えぇっ、シャレですかそれ、ま、マジか…」


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