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終止符.
第11章 うつろい
「……」

奈緒は黙っていた。
深く息を吸い、ゆっくりと吐き出しながら、奈緒は多田の次の言葉を待った。

「叶わぬ恋に胸を焦がしていたんだろう?」

「……」

「子どもの事で、あきらめがついたとか…」


「そうかも知れません。」

奈緒は否定して逆に不自然に思われるのを避けたかった。

「部長は知っていたのかな?」

「まさか。…ふふっ、私の事なんて眼中にないですよ。」

「ホントに?」

多田は篠崎との関係にまでは考えが及ばないようだった。

「だって、結婚して5年後に赤ちゃんが出来るんですよ、素敵な家庭に決まっているじゃないですか。」

奈緒は篠崎を守る為に必死だった。

「私の気持ちに気付いたとしても、部長は何も変わりません。」

奈緒は多田が疑いを持たないように、真っ直ぐに目を見て言った。

多田は奈緒を見つめながら、真剣な顔つきで

「俺なら…、迷わず君をモノにする。」

と言った。

「………」

目の前の男が放った矢を、奈緒は咄嗟に避けた。

「部長は、多田さんとは違います。」

奈緒は、早くこの男から逃げ出したかった。
軽いノリでみんなを沸かせる職場でのイメージは掻き消され、正面から奈緒を圧倒してくる力強さに戸惑った。

「…部長が鈍感でよかったよ。」

多田が薄く笑う。

「あの、もうこんな話止めませんか?」


多田はごくごくとジンジャーエールを飲み干してふーっと息を吐き出し、グラスをそっとテーブルに戻した。

「立花さん。」

「……はい。」

「今度は俺を見てくれないかな。」

「……」

「男を寄せ付けない君に惹かれてたよ…何度もあきらめようとした…ふふっ…森下はあきらめたようだけどね…」

「……」

「さっき、部長を見送っていた君は…凄く寂しそうにしてた…だから、卑怯だけど、今なら振り向かせられるかも…っていう姑息な手段を、俺は堂々と使わせてもらう。」

「は…」

奈緒は呆気に取られて多田を見ていた。

「……あ、言わなくてもいい事を言っちゃたかな?」

「そうですね。」

「と、とにかく、俺をちゃんと見てから判断してほしいんだ、撃沈するのはそれからにしてほしい。」

「あの…」

「は、はい。」

「笑ってもいいですか?」

「えっ? なんで?」

「ぷっ、あはははは…」

「は、ハハ、あはははは」

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