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終止符.
第12章 秘密
「待たせてごめん。」
コーヒーを飲んでいる奈緒の向かい側に篠崎が腰掛ける。
「社長は…」
「あぁ、予定通り3日後に退院できそうだよ。」
「そうですか。よかった、安心しました。」
篠崎はコーヒーを注文してから奈緒を見た。
「話というのは?」
クラシックの曲が流れる店内は明るく、少しざわついてはいたが、その方が話しやすいと奈緒は思った。
「…社長と谷口純の事についてなにかご存知かと思いまして。」
奈緒は思い切って口に出した。
「………」
篠崎は暫く黙って奈緒を見ていたが、諦めたようにため息を一つつくと重い口を開いた。
「純という名前は社長が付けた名前だ。」
「えっ?」
奈緒は驚いて篠崎の目に釘付けになった。
「生まれる前に決めていたから、実際にその名前が付けられたかどうかはわからなかったらしい。」
「………」
奈緒は次の言葉を待った。
「同姓同名という可能性もあった。」
「ちょっと待って下さい。それは、あの居酒屋で会った時に…」
「あぁ、そうだ。」
「………」
「私は結婚する少し前に一度だけ、社長から過去の事について聞かされた事があったんだ。」
「お待たせしました。」
「あ、ありがとう。」
運ばれて来たコーヒーを一口飲んで、篠崎は再びため息をついた。
「ガンが見つかってから急に、社長は彼の事を知りたがって、私に調べて欲しいと…」
「どうして…どうして名前まで考えてあげていたのに捨てたんですっ。」
奈緒は純の代わりに怒っていた。
「………いろいろ事情があったんだ。」
「か、勝手な事を言わないでください。」
奈緒の声は怒りに震えていた。
「勝手だわ、勝手過ぎる。」
「立花さん、落ち着きなさい。」
「あ…、すみません。」
奈緒はコーヒーを口に含み両手を膝の上で握りしめた。
篠崎は奈緒の勢いに驚きながらも、何かを覚悟したように深く息を吸い込むと静かな一言を口にした。
「奥様が亡くなられた。」
「えっ?」
「ほとんど誰も知らないことだが………社長の奥様は自殺された。」
「っ……そんな…」
奈緒は全身から血が抜けていくようなショックで身動き出来なくなった。
「よそに子供が出来た事が原因だったのかもしれないし、………詳しい事は分からない。私も自殺だとは知らされていなかったからね。」
コーヒーを飲んでいる奈緒の向かい側に篠崎が腰掛ける。
「社長は…」
「あぁ、予定通り3日後に退院できそうだよ。」
「そうですか。よかった、安心しました。」
篠崎はコーヒーを注文してから奈緒を見た。
「話というのは?」
クラシックの曲が流れる店内は明るく、少しざわついてはいたが、その方が話しやすいと奈緒は思った。
「…社長と谷口純の事についてなにかご存知かと思いまして。」
奈緒は思い切って口に出した。
「………」
篠崎は暫く黙って奈緒を見ていたが、諦めたようにため息を一つつくと重い口を開いた。
「純という名前は社長が付けた名前だ。」
「えっ?」
奈緒は驚いて篠崎の目に釘付けになった。
「生まれる前に決めていたから、実際にその名前が付けられたかどうかはわからなかったらしい。」
「………」
奈緒は次の言葉を待った。
「同姓同名という可能性もあった。」
「ちょっと待って下さい。それは、あの居酒屋で会った時に…」
「あぁ、そうだ。」
「………」
「私は結婚する少し前に一度だけ、社長から過去の事について聞かされた事があったんだ。」
「お待たせしました。」
「あ、ありがとう。」
運ばれて来たコーヒーを一口飲んで、篠崎は再びため息をついた。
「ガンが見つかってから急に、社長は彼の事を知りたがって、私に調べて欲しいと…」
「どうして…どうして名前まで考えてあげていたのに捨てたんですっ。」
奈緒は純の代わりに怒っていた。
「………いろいろ事情があったんだ。」
「か、勝手な事を言わないでください。」
奈緒の声は怒りに震えていた。
「勝手だわ、勝手過ぎる。」
「立花さん、落ち着きなさい。」
「あ…、すみません。」
奈緒はコーヒーを口に含み両手を膝の上で握りしめた。
篠崎は奈緒の勢いに驚きながらも、何かを覚悟したように深く息を吸い込むと静かな一言を口にした。
「奥様が亡くなられた。」
「えっ?」
「ほとんど誰も知らないことだが………社長の奥様は自殺された。」
「っ……そんな…」
奈緒は全身から血が抜けていくようなショックで身動き出来なくなった。
「よそに子供が出来た事が原因だったのかもしれないし、………詳しい事は分からない。私も自殺だとは知らされていなかったからね。」