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終止符.
第2章 綻び(ほころび)

「あなた、出掛けるんでしょう?」
「………」
「もういいかしら、家に入りたいの。」
「奈緒さん。」
「変な声で刺激して悪かったわ、壁が薄いのね。これからは気をつけます。」
「………」
「おやすみなさい。」
「奈緒さん。」
奈緒は、振り返りながら見つめる純に構わず、鍵をあけて家に入った。
真っ直ぐに向き合う眼だった。
自分がどこかに置き忘れてきた眼差しだった。
「不倫、か…」
人に指摘されると、その言葉が重く心にのし掛かる。
正しい道だけを歩んでいたあの頃。
人の過ちを、簡単に非難できたあの頃。
真っ直ぐな純の眼差しが、いつまでも心に張り付いて奈緒を責めた。
「なにも分かってないくせに。」
ファミレスで純に聞かれていた会話を思い出しながら、自分の生活が嘘の上に成り立っているという事を改めて確認し、言い訳を考える。
世の中に、本当の事なんてあるのだろうか?
愛し合っているのだから、誰も傷つけないのだから、お互い大人なのだから。
篠崎に逢いたい。
本当の事はここにあると言って欲しい。
自分で決める終わりの時を、人に左右されるのは嫌だ。
いつの間にか降りだした雨の音に気付いた時、メールの着信を告げるバイブの音が短く鳴った。
『お疲れー。
もう寝たかな?
今日ゆっくり見れなかったショップに明日行かない?
また純のとこでお茶しない?』
いやな予感がした。
この先、なにかのきっかけで、純が篠崎との秘密を、沙耶に洩らすような事になったら……。
『ごめんね。
明日は予定があるの。また誘ってね。
今日は楽しかったね。
おやすみ。』
奈緒は嘘をついた。
『了解でーす。
千秋が行けそうだから、明日は千秋と二人で行ってきます。
それじゃ、おやすみ。』
さらに不安が広がる。
細心の注意をはらって今まで過ごしてきた。
後ろめたさを感じながらも、仲間を大切に思ってきた。
小さな綻びが少しずつ広がり、隠せなくなる前になんとかしなければ。
奈緒は眠れない夜を、雨音を聞きながら過ごした。
買って来たファッション誌のモデル達が、奈緒を見て笑っていた。
「………」
「もういいかしら、家に入りたいの。」
「奈緒さん。」
「変な声で刺激して悪かったわ、壁が薄いのね。これからは気をつけます。」
「………」
「おやすみなさい。」
「奈緒さん。」
奈緒は、振り返りながら見つめる純に構わず、鍵をあけて家に入った。
真っ直ぐに向き合う眼だった。
自分がどこかに置き忘れてきた眼差しだった。
「不倫、か…」
人に指摘されると、その言葉が重く心にのし掛かる。
正しい道だけを歩んでいたあの頃。
人の過ちを、簡単に非難できたあの頃。
真っ直ぐな純の眼差しが、いつまでも心に張り付いて奈緒を責めた。
「なにも分かってないくせに。」
ファミレスで純に聞かれていた会話を思い出しながら、自分の生活が嘘の上に成り立っているという事を改めて確認し、言い訳を考える。
世の中に、本当の事なんてあるのだろうか?
愛し合っているのだから、誰も傷つけないのだから、お互い大人なのだから。
篠崎に逢いたい。
本当の事はここにあると言って欲しい。
自分で決める終わりの時を、人に左右されるのは嫌だ。
いつの間にか降りだした雨の音に気付いた時、メールの着信を告げるバイブの音が短く鳴った。
『お疲れー。
もう寝たかな?
今日ゆっくり見れなかったショップに明日行かない?
また純のとこでお茶しない?』
いやな予感がした。
この先、なにかのきっかけで、純が篠崎との秘密を、沙耶に洩らすような事になったら……。
『ごめんね。
明日は予定があるの。また誘ってね。
今日は楽しかったね。
おやすみ。』
奈緒は嘘をついた。
『了解でーす。
千秋が行けそうだから、明日は千秋と二人で行ってきます。
それじゃ、おやすみ。』
さらに不安が広がる。
細心の注意をはらって今まで過ごしてきた。
後ろめたさを感じながらも、仲間を大切に思ってきた。
小さな綻びが少しずつ広がり、隠せなくなる前になんとかしなければ。
奈緒は眠れない夜を、雨音を聞きながら過ごした。
買って来たファッション誌のモデル達が、奈緒を見て笑っていた。

