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終止符.
第2章 綻び(ほころび)
ひと月近く憂鬱な日々が続く。

友達の言動が気になる。

それでも篠崎に逢いたい…。温もりを確かめたい。


社員食堂でのランチタイムに篠崎からメールがあった。

『来週の金曜日に会えるかな?』

すぐに返信したい。

沙耶と千秋に上手く断って先に席を立つ。


『大丈夫です。
できれば自宅以外の場所で、お会いしたいのですが。』


『○○ホテルを予約するよ。』


『ありがとうございます。待ち遠しいです。』


奈緒の胸はときめいた。 その日は奈緒の誕生日だ。
誕生日を一緒に過ごすのは初めての事だ。

逢えない日々が続くと、不安になって落ち込んだ。けれどもメールが来ると、嘘のように気持ちが晴れやかになり、安心できた。

わがままな女にはなりたくない。
篠崎を困らせたくない。

奈緒が出来る事は、待つ事だった。

社員と談笑している篠崎をそっと見つめ、書類に目を通したり、電話で話す姿をそっと眺めた。

仕事をしている篠崎は、颯爽としていて、スマートな立ち居振舞いは女子社員達の目を引いた。

そんな篠崎が、自分を熱く淫れさせてくれる事が、誇らしかった。

そんな風に彼が抱く相手は自分だけだと、信じる事ができた。

「奈緒、奈緒…」

熱く耳元で呼ばれながら一緒に喘ぐひと時が、奈緒を捕らえて離さなかった。

もう嬉しくなくなった誕生日を、指折り数えて待つ自分がおかしかった。


仕事を終えた帰り道、沙耶が話しかける。

「ねぇ、奈緒。来週の金曜日って奈緒の誕生日だよね。」

「そうよ。」

「千秋と3人でご飯食べに行かない?奈緒に何かプレゼントするからさ。」

「あ…その日は妹がケーキを買って来るらしいの。」

「なぁんだ。もしかしたら途中から純クンも参加できるかも知れないんだよ。」

「えっ?」

「うふっ、じつはね、彼とメルアド交換したの。」

「どうして…」

「彼のバイト先に行った時、ちょうど休憩でお店から純クンが出てきたのよ。それで思い切ってお願いしましたぁ。」

「千秋も?」

「千秋は彼がいるからやめとくって。」

「………」

「恋の相談役にでもなって、若者に女の子の扱い方を伝授するわ。あはは。」

「そっか。残念だけど来週は無理なの、ごめんね。」

「いいのいいの。また別の日にするから。」


綻びが、広がり始める。

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