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終止符.
第13章 ひとり
4月になって1週間が過ぎた頃、1日を終えてベッドに入ろうとしていた奈緒に沙耶から連絡が入った。

『もしもし奈緒、純が帰って来たわよ!
今、友達んちに居候しててアパート探してるんだって。』

沙耶の弾んだ声に奈緒もつられて返事をする。

『元気そうだった?』

『あはは、相変わらずで安心したわよ。』

『そう、よかった。』

『あ、そうだ。純に奈緒の携帯番号教えちゃったんだけど構わないよね。』

『えっ? あぁ、構わないわ。』

『私なんてとっくにメル友になってたのに今更だよね。あはは。』

『そういえばそうね、ふふっ。』

奈緒も可笑しくて笑った。

隣に住んでいたせいか、連絡先を交換する事もしていなかった。


『来週の金曜日に例の場所で乾杯するっていうのはどう?』

『あの居酒屋ね。久しぶりだわ。』

『それじゃ、決まりね。千秋と森下さんも一緒だよ。』

『了解。』

『じゃ、来週ね。』


奈緒は携帯を持ったままベッドに座りごろんと横向きに寝転んだ。


純が帰って来た。


奈緒は膝を曲げて身体を少し丸めた。


これから純はどうなるのだろうか。

藤田が父親だと知ったら…。

自分が生まれた事で藤田の妻が娘を遺し、自ら命を絶っていたと知ったら…。

すぐにそこまではわからなくてもいつか、いつか知る時がきたら…。



奈緒は考える度に重くなる気持ちを抱えたまま、ただ壁を見つめていた。

(ブーブー…)


手の中で携帯が震えた。

奈緒は驚き、相手を確かめずに携帯を耳に当てた。

『はい。』

『………』

相手は黙っていた。

『もしもし?』

『……奈緒さん?』

『ッ………』

奈緒は驚いて飛び起きた。
純の声だ。

『もしもし…奈緒さんですか?』

『…はい。』

『僕…純です。』

懐かしい声。

『純…。』

『奈緒さん、ただいま。』

『…お、お帰りなさい。』

なぜか焦っていた。

『よかった、やっと連絡できた。』

『………』

『来週の事、聞きましたか?』

『あ、えぇ、金曜日にいつもの場所でって…』

『奈緒さん来られますか?』

『えぇ、もちろん。』

『よかった。あの……こんな遅くに電話してすみません。』

『いいの、まだ起きてたから。』

『それじゃ、おやすみなさい。』

『おやすみなさい。』



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