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終止符.
第13章 ひとり
奈緒は仰向けに寝て深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
コトコトと胸の鼓動が早くなり落ち着かない。
純の声が耳に残り、目を閉じるとマウイ島のあの夕暮れが浮かび上がる。
純は少し変わった。
そんな気がした。
電話のせいだろうか。
なかなか止まない胸の鼓動に奈緒は戸惑い、何度も寝返りをうつ。
放っておこう。
別に私とは何の関係もない事だ。
気を揉んでもしょうがない。
純の問題だもの。
奈緒は自分にそう言い聞かせ、目を閉じた。
胸がかすかにときめいている事を、奈緒は認めようとはしなかった。
浅い眠りに何度も目覚め、そんな自分を持て余していた。
────────
約束の日の前日、篠崎から電話が入った。
『電話してすまない。ちょっと頼みたい事があって…』
純の事だろうと奈緒は思った。
『はい、何でしょうか?』
『寺田さんから彼が帰国したと聞いてね。』
『はい。』
『もしも機会があったら…』
『はい。』
『彼の、母親の名前を聞いて欲しい。…加代子さんだと、社長が言っておられるんだが…』
『…わかりました。谷口加代子さんですね。』
『あぁ。こんな事に君を巻き込んでしまって…』
『構いません。あの、社長の体調は?』
『うん、なんとか出社できるようになられた。』
『そうですか安心しました。……それで、社長は彼をどう思っていらっしゃるんでしょうか?』
『うむ、会いたいらしいよ。……彼が望んでくれるのであれば。』
『そうですか…。でも私は…、それを彼に勧めることはできません。彼を傷付けたくないんです。』
奈緒はまた怒りが沸いてきた。
『うん、もちろん彼の気持ち次第だと、私も社長も理解しているつもりだよ。』
篠崎は奈緒をなだめるようにそう言った。
『本当ですか?』
『本当だ。』
『それなら、別に、いいんです。』
奈緒はほっとした。
『立花さん、君…』
『はい。』
『いや、いいんだ。』
『えっ?』
『悪いけど、さっきの事よろしくお願いします。』
『はい。あの…』
『ん? 』
『こちらからご連絡差し上げても構わないんでしょうか?』
『あぁ…もちろんだよ。…君はもう、大丈夫なんだね。』
篠崎の声が一段と優しくなった。
『えっ?』
『急がなくていいからね、連絡待ってるよ。』
コトコトと胸の鼓動が早くなり落ち着かない。
純の声が耳に残り、目を閉じるとマウイ島のあの夕暮れが浮かび上がる。
純は少し変わった。
そんな気がした。
電話のせいだろうか。
なかなか止まない胸の鼓動に奈緒は戸惑い、何度も寝返りをうつ。
放っておこう。
別に私とは何の関係もない事だ。
気を揉んでもしょうがない。
純の問題だもの。
奈緒は自分にそう言い聞かせ、目を閉じた。
胸がかすかにときめいている事を、奈緒は認めようとはしなかった。
浅い眠りに何度も目覚め、そんな自分を持て余していた。
────────
約束の日の前日、篠崎から電話が入った。
『電話してすまない。ちょっと頼みたい事があって…』
純の事だろうと奈緒は思った。
『はい、何でしょうか?』
『寺田さんから彼が帰国したと聞いてね。』
『はい。』
『もしも機会があったら…』
『はい。』
『彼の、母親の名前を聞いて欲しい。…加代子さんだと、社長が言っておられるんだが…』
『…わかりました。谷口加代子さんですね。』
『あぁ。こんな事に君を巻き込んでしまって…』
『構いません。あの、社長の体調は?』
『うん、なんとか出社できるようになられた。』
『そうですか安心しました。……それで、社長は彼をどう思っていらっしゃるんでしょうか?』
『うむ、会いたいらしいよ。……彼が望んでくれるのであれば。』
『そうですか…。でも私は…、それを彼に勧めることはできません。彼を傷付けたくないんです。』
奈緒はまた怒りが沸いてきた。
『うん、もちろん彼の気持ち次第だと、私も社長も理解しているつもりだよ。』
篠崎は奈緒をなだめるようにそう言った。
『本当ですか?』
『本当だ。』
『それなら、別に、いいんです。』
奈緒はほっとした。
『立花さん、君…』
『はい。』
『いや、いいんだ。』
『えっ?』
『悪いけど、さっきの事よろしくお願いします。』
『はい。あの…』
『ん? 』
『こちらからご連絡差し上げても構わないんでしょうか?』
『あぁ…もちろんだよ。…君はもう、大丈夫なんだね。』
篠崎の声が一段と優しくなった。
『えっ?』
『急がなくていいからね、連絡待ってるよ。』