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終止符.
第13章 ひとり
「…今聞いたわ。」

「そうですか…、じゃあ、あの喫茶店で話しませんか?」

純が指差したそこは、いつか多田と入った喫茶店だった。

奈緒は今日の純と向かい合って話す事は避けたかった。

調子を狂わされそうだ。

「あ、あそこのベンチは?」

奈緒は違う方向を示した。

「構わないですけど…、あれバス停ですよ。」

不思議そうに純が答える。

「…バスが来ても乗らなきゃいいのよ。」

「…変な奈緒さん。」


ホントに変。


奈緒は自分でもそう思いながら、その理由を突きとめるのは後回しにしたかった。


二人はバスを待つ人が誰もいないベンチの端に並んで座った。


何処からか、ひらひらと桜の花びらが舞い降りて来る。

その行方を目で追いながら、奈緒は膝に乗せたバッグが落ちないように両手で軽く押さえた。


「どんな話に花が咲いたの?」

風に舞う花びらを見上げながら奈緒が話しかける。

「いろんな話を聞いてもらったんですけど…僕…、奈緒さんに話したい事があって…。」

純は左側に座る奈緒を見つめながらそう言った。

「そう。…どんな事?」

地面に落ちて転がりながら、花びらは足元で渦を巻く。


「僕…向こうのホストファミリーのお父さんに聞かれたんです……ジェフっていう名前なんですけど……家族は何人だ? って…」

「えっ?」

奈緒は純の顔を見た。

「…家族はいないって答えたら…なぜいないのか聞かれて…、母親は亡くなって、父親は産まれた時からいなかったって答えました。…」

純は足元の花びらを一枚拾ってふぅーっと息を吹き掛け手から放した。

「そしたら、生きているのか、って聞くんです……分からないって言ったら、君はそれでいいのか、この先ずっと何も分からないままで平気なのかって…」

「………」

奈緒は伏せ目がちな純の横顔をじっと見ていた。

「奈緒さん…、僕、平気じゃなかったんです。」

「純…」

「日本は狭い、もしかしたらすれ違っているかもしれないよ、それでもいいのか、って聞かれた時、……いつも僕が思っていた事をジェフに言い当てられたと思いました。」

「………」

奈緒は言葉が出なかった。

純は心の中でずっと父親を求めていたのだろうか。

「ジェフも父親がいないそうなんです。」

純が真面目な顔で奈緒を見た。


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