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終止符.
第13章 ひとり
「っ……」

「奈緒さん…少しだけ…」


そう言いながら、純の腕に力がこもる。

胸の奥が痛い。

息をする事も忘れて奈緒の身体は純に抱きすくめられた。

純の手のひらが奈緒の髪を撫で、そのまま胸に強く押し当てる。

「ずっと抱きしめたかった…」

「………」


純の言葉が奈緒を包むように熱く切なく響き、このまま身体を預けてしまいそうになる。

それは奈緒にとって、純が旅立った時の無邪気な抱擁ではなくなっていた。

心が乱れ、胸が苦しく、それでもなぜか拒否できない。



うそ

私…

嘘…

違う

違うわ…



舞い降りて来る一枚の花びらが目に映り、奈緒は我に返った。


「純、は…離して。」


「…はい。」

純はゆっくりと奈緒を身体から離した。

「行きましょう。」

奈緒はそう言ってまた早足で歩き出した。

「奈緒さん、待ってください、まだ返事を聞いてない…」

純が追いかける。

「何の?」

奈緒は足を早める。

「だから…、今、好きな人がいるんですか?」

「………」

「奈緒さん。」

待ち合わせの居酒屋がどんどん近づいて来た。

奈緒は不意に足を止めて純を見た。

「いるわ。」

「えっ? 」

「もう返事はしたわよ。 さぁ、入りましょう。」

「そんな…」

ぽつんと立ちすくむ純を放ったまま、奈緒は店のドアを開けた。





「あ、奈緒。こっちこっち。」

入口近くのテーブル席から沙耶が手招きをする。

「こんばんは。遅れてごめんなさい。」

「お疲れさま。」

「こんばんは。久しぶり。」

森下と千秋が声をかける。


「あれ? 純は。」

沙耶が店の入口に目をやった。

「すぐ来ると思うわ。あ、ここ座っていい?」

「どうぞどうぞ。」

奈緒は空いていた千秋の隣の席に座った。


「あ、来た来た。」


「すみません。お待たせしました。」

純は奈緒の隣に座った。

「それじゃ、みんな揃った事だし、乾杯するわよ。」

それぞれのグラスにビールを注ぎ、沙耶に注目する。


「はい、それじゃ。カッコイイ純の帰国と、来年辺り結婚するであろう千秋の為に、カンパ~イ。」

「乾杯」

「カンパ~イ、千秋おめでとう。」

「あはは。ありがとう。 まだ先だけどね。」

「… 純、どうしたの?」

沙耶が純を見て言った。


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