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終止符.
第15章 痛み
『もしもし、曽根さん?……えぇ、遥はどうですか?……あぁよかった…はい、それじゃ、公園に着いたらお願いします。はい、すみません。』


愛子は慣れた手つきで電話を切った。


「お迎えですか?」


純が聞いた。


「えぇ、曽根さんです。車で娘のお守りをしてくれていたんです、ふふっ。」

「僕、緊張して喉が渇いちゃったんで缶コーヒーでも買って来ます。すぐに戻りますから。」


純はそう言うと足早に行ってしまった。


少しの沈黙の後、愛子が話しかける。


「純を連れて来てくださって、本当にありがとうございました。」

「いいえ…お話を聞かせて頂いて、その…なんと申し上げたらいいのか…彼は、救われたと思います。…表情が明るくなりました。」

「そうですか…よかった…」

愛子は正面を向いて座り直した。

杖を落とさない様に横にして、バッグと一緒に膝の上に置いて手を添えた。

背筋を伸ばし、顔を真っ直ぐ前に向けている姿は、何ものにも穢されない強さと美しさがあった。


「私は、見えない事は悪いことばかりではないという事を、小さい頃から知ってはいましたが…」

「はい。」

「母が嫉妬に狂った姿や、…死んだ姿を見なくて済んだ事は、今でもこの目に感謝しています。」


奈緒は黙ってその落ち着いた声に耳を傾けた。


「ただ…、夫の顔が、──……奈緒さん、あなたが夫のそばで二年間見続ける事ができた彼の優しい微笑みや、熱い眼差しを、妻である私が一生見られないという事が、……残念でならないのです。」


「───…!」


奈緒は目を見開いて篠崎の妻を見た。


「お待ちどうさま。はい、缶コーヒー。」


純が戻ってきてコーヒーを二人に手渡した。


「ありがとうございます。……あ…」


愛子の携帯が鳴った。



──あなたは気付いていた…



『はい、…そうですか、すぐ行きますから…はい、ありがとうございます。』


「着いたんですか?」


純が聞いた。



──母親のように狂いたくなくて



「えぇ、それじゃ私…」

「僕、そこまで送ります。」



──耐えていたんですか



「でも…」

「遥ちゃんが待っていますよ。」

「…ありがとうございます。それじゃ…腕を、掴ませてもらってもいいですか?」
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