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終止符.
第8章 転機
「奈緒さん。」

「……」

「彼とはこれから、どうするつもりなんですか。」

「…そろそろ終わりかな。」

「よかった。」

「子供を抱いて目尻を下げてる彼なんて想像できないし。」

「あはは。」

「今思いついたんだけど、仕事も辞めようかな。」

「えっ?」

「その方が面倒が起こらないと思うの。」

「どうして奈緒さんがわざわざ辞めるんです。」

「自分の為。」

「……」

「もう、彼を目で追いかけなくてすむわ。」

「あぁ…でもそんなに簡単に忘れられますか?……僕、いなくなるんですよ。」

「ちょうどいいわよ!」

「酷いな。」

「あはは。あなたを利用する気はないもの。」

「一人で泣くんですね。寂しい夜も。」

「さぁ。」

「暑苦しい朝も。」

「あはは。」

「笑っててくださいね。」

「わかった。」

「よし、帰りますか。」

「うん。帰ろう。」

「あ、メールだ。」

純が確認する。

「沙耶さんだ。奈緒さんを心配してる。僕に、ありがとう、だって。」

「あ、こっちにもメールが来た。」

『おはよう。
まさか二日酔いじゃないよね。(笑)

大丈夫?
今日はゆっくり休んでね。
今度純にちゃんとお礼すること!』

「沙耶からよ。」

「あはは。」

「うふふ。」

二人はそれぞれメールを返信して携帯をしまった。

「奈緒さん、後ろに乗りませんか?」

「うん、乗る。」

「どうぞ。」

奈緒は横向きに座って、純の腰に手を回した。

純がこぎだす。

「奈緒さん、重いな。」

「失礼ね。」

公園を抜け、緩やかな坂道を、風を感じながら滑り下りる。

規則正しく並んだ街路樹の影の間を、二人乗りの自転車が通り抜けてゆく。

これから待ち受ける孤独と寂しさを覚悟しながら、奈緒は通り過ぎる町の景色を眺めていた。

「純、がんばってね。」

「奈緒さんも。」

「うん。」

「うぉー登り坂だ。」

「あははは。がんばれー。」

「くっそー。」

「残ってるおにぎりあげるわよー。」

「うぉー!」

奈緒はけらけら笑いながら純にしがみついた。

純が暗い過去を脱ぎ捨てて、まっすぐに道を進んで行けるように、心の底から応援した。

「純、がんばれー、ファイトー。」

「…つ、着いた……」

「お疲れ~。はい、おにぎり。」



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