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終止符.
第8章 転機
「…ありがとうございます。…すぐには食べられないから、後でいただきます。」
純は自転車置場に自転車をしまいながら息を整えた。
アパートの階段を上がる。
「奈緒さん、ちょっと待っててください。」
純はそう言うと自宅のドアを開けて中に入り、すぐに出てきた。
「これ。」
「わぁ、がんばったのね。ちゃんと額に入って凄く立派だわ。」
純は出来上がったジグソーパズルを嬉しそうに奈緒に見せた。
青い空と海、白い砂浜、、ヤシの木、真っ赤なハイビスカス。
「夏だね。」
「夏です。」
やはり夏色の風景は純にぴったりだと奈緒は思った。
「夏はあなたの季節ね。」
「そうかな。」
「そうよ。」
「奈緒さん。」
「なぁに?」
「…これ、奈緒さんに。」
「えっ?」
「僕、持っていけないし、この部屋も引き払ってしまうから、置く場所もないんです。あ、そうだ自転車も。」
「でも。」
「お願いします。」
「日本に帰って来たらどこに住むの?」
「しばらく友達の家に居候します。」
「そう。」
「これ、奈緒さんの部屋に置いてほしいんです。」
「わかった。壁に掛けとくね。」
「ありがとうございます。」
純から手渡された風景を眺めながら、自分の部屋が明るくなる想像を楽しむ。
「片付けるのが大変ね。」
「元々あまり荷物はなかったし、預かってもらえる物もあるから大丈夫です。」
「そっか。」
「はい。」
「じゃあ、バイトがんばってね。これ、ありがとう。」
「はい。少し寝てからバイトいってきます。」
「いってらっしゃい。」
奈緒は自宅の鍵を開け、純に軽く手を振って中に入った。
狭いリビングの壁に、夏の風景を張り付けよう。
ソファーに座って眺めよう。
寂しい時に、この風景が自分を癒してくれるかもしれない。
純の明るさを思い出すかもしれない。
……
どうしてだろう。
純はどうして、あんなに明るくいられるのだろう。
明るさも人懐っこさも、生まれ持った性質だろうか。
どこかで無理をしているのだろうか。
奈緒は純の決断に後押しされるように、自分の意思を固め、別れを切り出す覚悟を決めた。
そして、新しい仕事を探し始めた。
環境を変えて、忙しくしているほうが、笑っていられるに違いないと、奈緒はその時思っていた。
純は自転車置場に自転車をしまいながら息を整えた。
アパートの階段を上がる。
「奈緒さん、ちょっと待っててください。」
純はそう言うと自宅のドアを開けて中に入り、すぐに出てきた。
「これ。」
「わぁ、がんばったのね。ちゃんと額に入って凄く立派だわ。」
純は出来上がったジグソーパズルを嬉しそうに奈緒に見せた。
青い空と海、白い砂浜、、ヤシの木、真っ赤なハイビスカス。
「夏だね。」
「夏です。」
やはり夏色の風景は純にぴったりだと奈緒は思った。
「夏はあなたの季節ね。」
「そうかな。」
「そうよ。」
「奈緒さん。」
「なぁに?」
「…これ、奈緒さんに。」
「えっ?」
「僕、持っていけないし、この部屋も引き払ってしまうから、置く場所もないんです。あ、そうだ自転車も。」
「でも。」
「お願いします。」
「日本に帰って来たらどこに住むの?」
「しばらく友達の家に居候します。」
「そう。」
「これ、奈緒さんの部屋に置いてほしいんです。」
「わかった。壁に掛けとくね。」
「ありがとうございます。」
純から手渡された風景を眺めながら、自分の部屋が明るくなる想像を楽しむ。
「片付けるのが大変ね。」
「元々あまり荷物はなかったし、預かってもらえる物もあるから大丈夫です。」
「そっか。」
「はい。」
「じゃあ、バイトがんばってね。これ、ありがとう。」
「はい。少し寝てからバイトいってきます。」
「いってらっしゃい。」
奈緒は自宅の鍵を開け、純に軽く手を振って中に入った。
狭いリビングの壁に、夏の風景を張り付けよう。
ソファーに座って眺めよう。
寂しい時に、この風景が自分を癒してくれるかもしれない。
純の明るさを思い出すかもしれない。
……
どうしてだろう。
純はどうして、あんなに明るくいられるのだろう。
明るさも人懐っこさも、生まれ持った性質だろうか。
どこかで無理をしているのだろうか。
奈緒は純の決断に後押しされるように、自分の意思を固め、別れを切り出す覚悟を決めた。
そして、新しい仕事を探し始めた。
環境を変えて、忙しくしているほうが、笑っていられるに違いないと、奈緒はその時思っていた。