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終止符.
第10章 寂寥(せきりょう)
「それじゃあ私はグラタンとトマトサラダにしちゃお。」

「ふーん。私はカルボナーラと生ハムサラダと食後にショートケーキ。」

「沙耶、ダイエットは?」

「さぁ知らなーい。あはは。」

「うふふ。」

奈緒は沙耶のおかげで少し気持ちが楽になった。
二人は食事をしながらいつものお喋りに花を咲かせる。

森下とケンカした時の事を、口を尖らせながら話す沙耶は可愛らしく、奈緒は目を細めて聞き役に徹した。

篠崎とケンカした事はなかった。不満を言える立場ではなかった。

奈緒は繋がりを深め合っている沙耶達の付き合いが、このまま上手くいくに違いないと感じていた。

ぽつんと取り残されていく自分がいた。


沙耶にありがとうを言って別れ、最寄り駅で電車を降りる。

秋の色が日増しに濃くなり、夜空に浮かぶ三日月が明るくはっきりと見える。


小さい頃、月を見ながら右へ左へと駆けてみると、同じように月に追いかけられ、どんなに早く駆けてみても、見つからないように父の影に隠れてそっと覗いても、月はいつも見透かしているようにそこにいた。

いつの間にかそんな事も忘れて、密かに罪を重ね続けていた。

見透かされている事も忘れて。

奈緒は月を見ながら歩いた。
コンビニの前を通り、公園沿いに歩く。
木々の間を見え隠れしながら月が奈緒を追う。

今度の休みには純が置いていった自転車で出掛けてみよう。

奈緒は純が自転車で必死になって上った坂道を歩きながら、あの時の純のくたびれた顔を思い出し少し笑った。

アパートの階段を上がりながら純と初めて出会った時の事を思い出す。

「あんなに秘密にしていたのに、純にはすぐにばれちゃったな。」

自宅の鍵を開け、中に入って部屋の明かりをつけた時、携帯が短く震えた。

「沙耶かな?」

確認してみる。

一瞬息が止まった。

「部長…」

胸の鼓動が聞こえそうな程奈緒の心臓は大きく震え、ドクンと一度強く響いた後は早鐘ねのように鳴り続けた。

両手で携帯を握り締めながらタイトルのない画面を次へと進める。


『突然のメール、申し訳ありません。少し聞きたい事があります。

これから訪ねてもいいだろうか。』


奈緒は胸を押さえながら何度も読み返した。


ここへ?


奈緒はどうしたらいいのか分からなくて混乱した。

どうしよう
正しい答えはなに…

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