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終止符.
第10章 寂寥(せきりょう)
「部長、構いませんから、電話に…」

電話に出るのをためらっている篠崎に、奈緒は出るように促した。

「ごめん。」

篠崎はそう言って携帯を耳に当て、奈緒に背を向けた。

「はい…あぁ、どうした……うん、…えっ?……ちょっと待って、愛子、そこにじっとしてるんだ、いいね…大丈夫、曽根さんに連絡してすぐに来て貰うからね、私もすぐに行く、…あぁいいんだ…危ないから、そこにじっとしてなさい、いいね。」

篠崎は青ざめた様子で急いで電話を切ると、すぐにどこかへかけ直した。

「………」

奈緒は顔をひきつらせて焦っている篠崎を初めて見た。

「あ、もしもし曽根さん? 夜分遅くに申し訳ありません…えぇ、じつは愛子が破水したらしいんです、私は今出先で、…よくわからないんですけど、彼女慌てていて……はい、はい…そうですね、すぐに向かいます、えぇ、はい…予定日、予定日え~っと…あ、12月2日です、はい、…ありがとうございます。いつもすみません、それじゃあ、後で…はい、よろしくお願いします。」

篠崎はほっとしたようにため息をついた。

「大丈夫ですか?」

「あぁ、たぶん…ごめん、奈緒、すぐに病院に行かなきゃならない。」

篠崎は早足で歩き出した。

「奥様のお母様に連絡は?」

奈緒は篠崎の背中に呼びかけた。

「母親はいないんだ、ずっと前に亡くなった。…奈緒ごめん。もう行くよ。」

振り向いてそう言うと、すぐに前を向いて歩き出し、また電話を掛けていた。

「もしもし愛子、すぐに曽根さんが来てくれるからね、一緒に病院に行くんだよ、私もすぐ行くから、……大丈夫だよ絶対大丈夫だ──」

何度もつまずきながら公園を出て、自転車や通行人とぶつかりそうになりながら先を急ぐ。

篠崎の姿が遠退いて行くのを、奈緒はぼんやりと眺めていた。


篠崎は迷わず奈緒を残して行った。

篠崎は奈緒に大変な事が起きても、すぐに駆けつけて来られない、人様の家族だった。


『あなたはきっと深く傷付く。』

『あなたは何もわかってない。』


純の言葉が頭に浮かぶ。

「わかっていたわ…ちゃんとわかってた…」


奈緒は自転車を押しながら公園を出て、アパートへ向かって歩き出した。

坂道を上りながら、さっき見た篠崎のカッコ悪い後ろ姿を思い出した。

家族の元へ戻って行く男は、なりふり構わぬ姿だった。


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