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第8章 逃走

「 申し訳ありません。私の患者がご迷惑をおかけしたみたいで。
私の監督不行き届きです。」
ご主人様が警官に頭を下げると警官の方が恐縮したように言う。
「 神崎先生の患者さんでしたか。こちらも現状が分からなくて今から聞くところだったんですよ。特に何か事が起きた訳ではないので気にしないでください。」
私の存在はまるでないかの様な会話で私は簡単にご主人様に引き渡された。

無言のまま部屋に連れ戻され部屋ドアが重い音を立てて閉まるとご主人様がいつもにまして低い声で話す。
「 ルカ。どう言う事？」
私は何も言えずただ俯いているしかできない。
「 ここから逃げられると思ったんだ。キミは僕の患者。カルテだって診察記録だって作成してあるんだよ。
つまり、キミは精神的に正常な状態ではないと言う診断が公的についているんだよ。」