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愛のシンフォニー
第4章 それぞれの愛
現に湊汰の芸は最近少しだけウケ始めて呼んでくれる店も増えつつある。そんなにはおカネにならなくてもこれからだ。

「アイツの芸は本当に面白くてさ・・ノロケてると思われてもいいからちょっと聞いてよ・・」

なぎさは湊汰の弾き語り芸の真似をして饒舌に語り始めた。その様子から湊汰の芸への愛が感じられる。

湊汰は同棲の恋人なぎさを風俗で働かせてしまった悲しみから新たなる芸を生み出したのだ。

風俗に行ったら初恋のあのコが出てきたネタや、お見合いの前日に風俗に行ったらお見合いにやってきた相手は昨夜の風俗嬢だったネタや、風俗に行ったら会社で隣の席の女子社員が出てきたネタなどを面白可笑しく弾き語りする芸が少しだけウケ始めているのだ。

なぎさは本当に楽しそうに湊汰の真似をしてネタの歌を口ずさむ。

「きゃはは、面白いですね~。きゃはは」
と美樹は爆笑して手を叩いた。こんなに心底爆笑したのは始めてかも知れない。

「それだけ面白ければ、とくちゃんみたいに可愛がってくれる女の人も出てくるかも」

「それは嫌」

美樹の笑いを遮るようになぎさはきっぱりと言った。

「アイツが稼げるようになるまではおカネのことはあたしが何とかするから、アイツにはおカネのために他の女に体を売るようなことはしてほしくない」

「ご、ごめんなさい。あたし何かヘンなこと言っちゃったね・・」

美樹はしまったと思った。調子に乗ってなぎさを傷つけるようなことを言ってしまった。

「ううん、気にしないで。あたしこそムキになっちゃってごめん。自分だって風俗なんかで働いてるくせにヘンなヤツだと思うでしょ。でも、アイツのためにできることはしてあげたいんだ」

なぎさは幸せそうな笑顔を浮かべる。その顔はダメな男のせいで風俗に身を沈めた悲壮な女の顔なんかじゃなくて、愛する男を支えて共に生きる幸せな女の顔だった。

「好きな人のためにできることはしてあげるか・・」

なぎさと別れた後で美樹は夜の街に向かって歩いていた。

そういえば徳造は家賃を払ってしまっておカネが殆どないはずだ。徳造とのデートはスゴく楽しみだし、一生の想い出にしたいけど、デートするおカネどうするのかな?と思って夜の街を歩く。

なぎさのようにずっと風俗で働くなんて自分にはできそうもないけど、ちょっとアルバイトするぐらいならできるかも・・。

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