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愛のシンフォニー
第4章 それぞれの愛
自分は美樹のことを愛している。この世界中の誰よりも愛している。その気持ちに偽りはない。今晩貴美子に体を許したのだって美樹とデートするおカネを稼ぐため。

おカネのためだけの体の関係なら美樹を裏切ったことにはならないと勝手な理屈で自分を誤魔化して正当化していた。

しかし、少しでも貴美子に対する恋愛感情が芽生えてしまった今、美樹を裏切ったことになる。そればかりでなく、体の関係を持ちながら美樹のことを想っているなんて貴美子のことも裏切っている。

そんなことをあれこれと考えているうちに大粒の涙が徳造の頬を流れていた。

「ただいま~」

アパートに辿り着いて少し躊躇ってから徳造は意を決してドアを開けた。こんなふうに「ただいま」を言って家に帰るのは久しぶりで新鮮なのに今日はスゴく気が重い。美樹の顔をまともに見れる自信がない。浮気をした男はこんな気持ちで家に帰るのだろうか。

いつもは明るい笑顔で「おかえり」と迎えてくれるのに美樹の声がしない。他の女と浮気をしている自分に愛想を尽かして出ていってしまったのだろうか・・

徳造が部屋を見渡すと奥の方で体育座りで膝の上に俯いて美樹が泣いていた。今夜はいつものコスプレではなく、普通の服だ。

徳造は美樹の近くまで行って恐る恐るもう一度「ただいま」を言ってみた。

「あっ、とくちゃん・・とくちゃ~ん」
美樹は徳造に抱きついて思いきり泣いた。

「とくちゃん、家賃払っちゃってデートするおカネも大変かなと思ってキャバクラに体験入店してみたの・・」

泣き終わると美樹は涙声で今夜あったことを話し始めた。

裸になったりエッチなことをするのはイヤだから、お触りもなく、キレイなドレスを着て接客するだけのキャバクラを体験入店に選んだ。
体験入店でも1万円はもらえる。

最初は先輩キャバ嬢のヘルプとして席に着いた。スカートでソファに座るとスカートが色っぽいことになったり、ドレスで前屈みになると胸元が色っぽいことになったりする。

その客はそんな色っぽいところばかりチラ見している。先輩キャバ嬢が「またそんなとこばかり見て~、いやだぁ、きゃはは」と笑っていたので、それはガマンした。一応スカートの中は見せパンにしたし・・。

客のオーダーを伝えに行こうと席を立ち上がった瞬間、お尻に違和感を感じた。
見ると客がいやらしい顔をしてお尻を撫でていた。
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