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幸せの欠片
第4章 新しい躾
「あなたじゃなくて、ご主人様だ」

「はい……、あぁ…ご主人様…」

「床に手をつくんだ」

「え?」

「『え?』じゃない、早くしろっ」

「はい」

 麻衣は急いでしゃがみ込むと、両手を床についた。

「誰がお尻を下ろしていいと言った? お尻は上げるんだよ」

 そう言いながら、上げかけた麻衣の腰をすくい上げるようにし、部屋着のドレスをめくり上げて、お尻を叩いた。

 パチーンと、乾いた音が部屋に響き渡り、甘い痛みがお尻を走る。

「あぁ……」

「いいか、これから床に手をつけと言ったら、この姿勢だぞ」

「はい・・・・・・」

 不思議なことに、夫から与えられる痛みは、苦しいよりも甘みの方が強いと感じられる。

 こんな被虐的なことに体を熱くする自分がいることを、これまで知らなかった。

 夫は、気がついていたのかしら?



「よし、食べるぞ」

「はい、すぐに用意します」

 考えてみれば、実家の両親の会話の形式も、やはり母が敬語で受け応えする旧弊なものだった。

 夫は、麻衣の一部として、そういうところが気に入っていたのだろうか。

 麻衣の気付かないようなところに魅力を感じていなければ、女性にモテる悟が、特別に美人でもない麻衣を選ぶはずのない気もした。


  食事を済ませ、後片付けを終えると、悟はリビングにいて、ソファに座ったまま、麻衣を呼んだ。

「おい」

「はい」と返事をして、急いで傍に行く。

 立ったままだと夫を見下ろす格好になるので、さっと膝をついた。

 テーブルの上には、鍵のかかる大きめのブリーフケースが置かれ、夫がふたを開けようとしているところだった。

「脱げ」

「……はい」

 とりあえずドレスを脱いだ。

「全部、脱ぐんだ」

「え?」

「お前は『え?』が多すぎる。床に手をつけっ」

 とっさに、膝をついたままの姿勢で手をついてしまった。

「違うだろう?」

「あっ」

「お仕置きが欲しいのか?」

 慌ててお尻を高く上げる。

 パチーン、パチーン。

 今度は、さっきよりも強く叩かれた。

「脱げと言ったんだ」

「はっ、はいっ」

 まず、ブラジャーを外し、片手で両の乳房を隠すようにしてから、ショーツを脱いだ。
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